Ryoko Tasaki
2025年2月14日

世界マーケティング短信:博報堂DYHDと博報堂のトップ交代発表

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

西山泰央氏(左)と名倉健司氏
西山泰央氏(左)と名倉健司氏

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

水島正幸氏は代表取締役会長に 博報堂

博報堂DYホールディングスは、西山泰央氏が6月に代表取締役社長COOに就任予定であることを発表した。水島正幸氏は、代表取締役会長CEOに就任する。西山氏は1989年に博報堂に入社。第6営業局長を経て、2019年に執行役員に就任し、2024年からは博報堂DYホールディングスの執行役員を務める。

同社は体制刷新の理由を「さらなる事業構造の転換と、次世代ビジネスへの取り組みを加速させていくことを目指した、新たな推進体制を構築するため」としている。

また4月1日付で、博報堂の代表取締役社長に名倉健司氏が就き、水島氏は会長になることも発表された。名倉氏は1991年に博報堂に入社し、第12営業局長を経て2018年に執行役員に就任し、2023年から取締役常務執行役員を務める。両社の取締役会長を兼務した戸田裕一氏は退任する予定。

児童性的虐待サイトに大手ブランドの広告 アダリティクス調べ

アダリティクス(Adalytics)が発表したレポートによると、ソニーやNFLなど大手ブランドの広告が、「imgbb.com」「ibb.co」といった画像共有サイトに掲載されていたという。これらは児童性的虐待コンテンツ(CSAM)を掲載しているとして、全米行方不明・被搾取児童センター(NCMEC)が指摘していたサイトだ。レポートによると、imgbb.comはアマゾン(Amazon)、グーグル(Google)、マイクロソフト(Microsoft)などのアドテクベンダーのからの広告を掲載することで収益を上げているようだ。

レポートを受け、米上院議員のマーシャ・ブラックバーン氏とリチャード・ブルメンタール氏はこれらの企業のCEOに宛てた書簡を公開。広告出稿先がCSAMを掲載するサイトであることを知っていたのか、発覚後にどのようなアクションをとったのか、広告主が広告掲載先の正確なURLを簡単に確認できないのはなぜかといった質問を投げかけた。また、米国政府の広告がこれらのサイトに掲載されていることも問題視し、公的な資金が意図せず違法行為を支援してしまっている可能性を指摘する。

アマゾン、広告の通期売上高が初の500億米ドル超え

アマゾンが2024年第4四半期の決算を発表し、広告サービスの通期の売上高が初めて500億米ドルを超え、562億米ドル(前年比+18%)に達した。全体の純売上高は6,380億米ドル(同+11%)。

第4四半期の純売上高は1,878億米ドル(前年同期比+10%増)で、その9%を広告サービス(173億米ドル)が占める。

この成長は、同社が動画配信サービス「プライムビデオ(Prime Video)」に広告を導入したことによる部分が大きい。2024年に米国、英国、ドイツなどで広告配信を開始し、2025年には日本、ブラジル、インドなどの市場にも拡大する予定だ。

メタ、「成果の低い」従業員を5%削減へ

メタ(Meta)が従業員の5%をレイオフするとロイターが報じた。対象となるのは業績評価で基準を「ある程度満たした」あるいは「満たさなかった」とされた従業員が中心。世界中に約72,000人の従業員がおり、5%は約3,600人に相当する。

マーク・ザッカーバーグCEOが社内に宛てたメモによると、今年は激動の年になるので、最高の人材を確保するために「パフォーマンス管理の基準を引き上げて、成果が低い従業員をより迅速に解雇することに決めました」とのことだ。機械学習のエンジニアなど「事業に不可欠な」エンジニア職については、採用を強化していく。

スーパーボウルCM、製薬大手2社ががん早期発見を啓発

世界一高額といわれるスーパーボウル(アメリカンフットボールの優勝決定戦)のCM枠が、過去最高額を更新した。際立つアイデアや豪華な出演者で毎年話題になるCM枠だが、異彩を放っていたのが製薬大手のファイザー(Pfizer)とノバルティス(Novartis)のがんを扱った60秒CMだ。

2年連続で出稿したファイザーのCMで、今回使用された楽曲「Mama Said Knock You Out」は、LLクールJの1990年のヒット曲。妻のシモーヌ・スミスは2004年に発症した軟骨肉腫(骨に発生する希少がん)を克服した。2人はファイザーと提携し、がんの早期発見の重要性を呼び掛ける。

ノバルティスのCMは、女性の胸にフォーカスした内容になっている。最後に登場するワンダ・サイクス(女優・コメディアン)は、乳がんサバイバー。NFL選手と婚約中のヘイリー・スタインフェルド(女優・歌手)や、選手と結婚したクリスティン・ユズチェック(ファッションデザイナー)も出演する。

ユズチェックは親を乳がんで亡くしている。ノバルティスの最高マーケティング・顧客体験責任者のゲイル・ホーウッド氏によると、乳がんによる影響を受けた人物をアンバサダーに選びたいと考え、同氏の起用を決めたという。

スーパーボウルは年間で最も視聴率の高いイベントだが、製薬会社が積極的にCMを放送してきたわけではなかった。だが多くの女性視聴者にリーチでき、健康にかかわる行動を促せることを重視したとホーウッド氏は語る。「ただスーパーボウルで目立ちたかったわけではありません。注目を集めることで人々がメッセージを受け取り、行動を起こしてほしいのです」。

【お知らせ】

Campaign Asia-Pacificが主催する「PRアワード アジア・パシフィック2025」のエントリー受付が始まりました。早期エントリー締切は3月4日、通常エントリー締切は3月27日。詳しくはこちら(英語)をご覧ください。

 

(文:田崎亮子)
 

提供:
Campaign Japan

関連する記事

併せて読みたい

13 時間前

多くの企業、「ディープフェイク」に無防備:フォレスター調査

調査会社フォレスターの報告書で、ディープフェイク対策の不備から多くの企業がリスクに直面していることが明らかになった。

14 時間前

今も男性中心の広告業界、黙認するのはもうやめよう

既視感と失望:ワイデン+ケネディ シドニーがクリエイティブチームに男性のみを採用したことで、広告業界で多様性が有限不実行になっていることが明らかになった。「口先だけ」のコミットメントに終止符を打つよう、ジェット・スウェイン氏が呼び掛ける。

2 日前

スーパーボウルCM、製薬大手2社ががん早期発見を啓発

際立つアイデアや豪華な出演者が話題となる米スーパーボウルのCMで、がんの早期発見を呼び掛けるCMが注目を集めた。

2025年2月13日

業界が取り組むべき、気候変動対策とは

依然として環境アクティビストの対応に苦慮する大手エージェンシー。「最も有効な対策は、カーボンプライシングの重要性を訴えること」と気候問題の専門家は訴える。