「明確なブランド・アイデンティティーとシンプルなデジタル・プロダクト。この2つが、ツイッターを活用したいと考える広告主からの最も多いリクエストでした」
カンヌライオンズの期間中、ツイッター初のグローバルCMO(最高マーケティング責任者)であるレスリー・バーランド氏がCampaign Asia-Pacificのインタビューに応じた。同社は先週、プラットフォームのモデルチェンジを実行したばかり。「更なる新規ユーザー、広告主を獲得する基盤を整えた」と同氏は語る。
これまでツイッターのユーザーインターフェース(UI)は、「複雑で分かりにくい」という批判があった。「新しいUIはより軽く、シンプルで使いやすい。今起きていることをリアルタイムでカバーする、『ツイッターならでは』のスピード感をよく表しています」。
主要ブランドがプロダクトやサービスの開発・改善に取り組む際、ユーザーと広告主の双方にリサーチを行うのが一般的だ。ツイッターも今回、この手法をとった。そして前述の「2つの重要なポイント」を広告主から引き出した。
「1つはアイデンティティー。ツイッターとは何か、なぜ他のブランドと違うのかという点を明快にすることでした」。その戦略の中心に、「What’s Happening(今、どうしてる?)」のプラットフォームを位置付けた。「ユーザーがいろいろな瞬間や出来事に関われるようになり、これまでのところ強い支持を受けています」。
「プロダクト面のポイントは簡素化でした。より簡単に、直感的に使えることが広告主にとって極めて重要なのです」
デザインを一新したツイッターだが、ブランド・アイデンティティーを明確化する試みはバーランド氏が同社に加わった18カ月ほど前から始まった。同氏は社内を再編、マーケティング部門とコミュニケーション部門を自身の直轄にした。「課題を絞って優先事項をあぶり出し、大きな視点で効率的に対処することに注力しました」。
こうして「What’s Happening」が導入されると、新たなキャンペーンも始まった。その一環として、今年のカンヌライオンズでは米国と日本向けの2本の広告を発表した。
「このプラットフォームは、ブランド構築のために何よりも優る重要な基盤です。我々のプロダクト戦略はこれに根差している。つまり、世界の出来事を伝えるニュースと情報が基本なのです」。
バーランド氏は昨年、クリエイティブやプロデューサー、ディレクター、コンテンツ・ストラテジスト、ソーシャルメディア・マーケターなどから成るチーム「ツイッター・スタジオ」を社内に立ち上げた。まだその存在はあまり知られていないが、「What’s Happening」を活性化していくためにこのチームが果たす役割は、米国の2社のエージェンシー「ハッスル(Hustle)」「ランドリー・サービス(Laundry Service)」と並び重要だという。
同氏は今、アジア太平洋地域の将来性にも着目する。「この地域はまだ潜在的な成長力を秘めています。既に競争が激しいのは百も承知。それでもチャレンジをしていきます」。
「我々のブランド・ポジショニング、特にライブ動画の取り組みがこの地域でチャンスをつかむきっかけになるでしょう。『グローバルかつローカル』な戦略を続けることで、市場で存在感を放っていきたいと考えています」
(文:ファイズ・サマディ 翻訳:高野みどり 編集:水野龍哉)