AOI Pro.は1963年、TYOは1982年から国内でテレビCM制作を手掛けてきたが、2017年1月に共同持ち株会社「AOI TYO Holdings」を設立する。
なぜ突然、統合の意思決定がなされたのか? 広報担当者がメールでの取材に応じ、日本の広告主がオンライン重視の姿勢を強める中で、両社の主力事業であるテレビCM制作の今後の大きな成長は難しいとの判断があったと回答。また、仮想現実(VR)や拡張現実(AR)など新しい分野に事業機会を見出しているという。両社の経営資源を共有することで、競争における脅威を軽減し、新しい成長分野に活路を見出したい考えだ。
両社とも、グローバル市場で事業拡大する以外に大きな成長を果たす道がないと認識しており、いずれも既にアジアに一定の足掛かりを築いている。AOI Pro.は中国、タイ、インドネシアに現地法人を有し、TYOはインドネシアで合弁事業を展開、タイのクリエイティブエージェンシーに出資もしている。両社とも日本企業の海外事業展開に対応する一方で、現地企業との取引拡大を目指している。
「魅力あるサービスを提供し、日本のみならずアジアでナンバーワンの、映像を主とした広告関連サービス提供会社を目指して、今回の統合に踏み切りました」と広報担当者は説明する。「経営統合後、AOI Pro.はクライアント基盤を日系企業からアジア各地の現地企業にも拡大していく方針です」
AOI Pro.の海外成長は現在、2013年に子会社化した北京のテレビCM制作会社「北京葵友広告有限公司」によるところが大きい。2016年には「上海葵友広告有限公司」も関連会社に加えている。
AOI Pro.は、今後は現地クライアントとの直接取引を増やしたい意向だ。その点ではTYOは既に経験値を積んでいる。経営統合の発表の中で、AOI Pro.は「動画コンテンツマーケティング」を重点分野として挙げている。これに取り組むのは、2015年12月に子会社化したQuark tokyo(ナカミノから社名変更)だ。同社は動画関連サービスを戦略立案、デザイン、制作、データ解析、メディア配信に渡り幅広く提供する。
「広告主との直接取引には、新しい顧客基盤づくりの強化が必要。広告主との直接かつ強固な関係を有するTYOとの相乗効果は、非常に大きいと考えています」(広報担当者)
なお、TYOは6月にPR事業の開始を発表して驚かせたばかりだが、これについては「既存の広告映像制作事業とのシナジーが期待できる」としている。
広報担当者によれば、AOI TYO Holdingsはこれまで外部委託してきたPR機能を内製化し、広告とPRを含むコミュニケーション全体に渡るサービスをワンストップで提供する。これにより、クライアント企業の複数部門にまたがる大型プロジェクトを手掛けることが可能になり、ひいては利益の最大化につながるとの見通しだ。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:鎌田文子 編集:田崎亮子)
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