ファネルはトップヘビーか、ボトムヘビーか、それとも、完璧なプロポーションか? 今、予算会議においては、収益のことよりマーケティングファネルに関する議論の方が主要な課題となっている。
そして、ファネルにこだわるにはそれなりの理由がある。これまでファネル最上部に位置するブランディングと、ファネル底部にある購入とのバランスは常に保たれてきた。しかし近年、テクノロジーの発展に起因して、この両者の隔たりは劇的に大きくなっている。今や、このバランスを間違えると、数百万ドルを無駄にしてしまう可能性さえあり、ブランドイメージに大きなダメージを与える可能性もある。しかし、これを正しく理解できれば、現在のマーケティングコミュニティが直面している、ひどく複雑に絡み合ったメディアマトリクスもマスターすることができるだろう。
この新たな複雑性がもたらす利点のひとつは、さまざまな落とし穴を回避できる抜け目のないマーケターであれば、かつてないレベルのROIが期待できるということだ。なぜなら私たちは今、「メディアはメッセージである」というマーシャル・マクルーハンの格言がもはや通用しない世界に生きているからだ。今や、メディアは単なるメッセージではなく、営業活動そのものにもなり得る。
だからこそ、ファネルの最適化は極めて重要であり、大きな利益にもつながる。人々は、コントロールされたエコシステムの内部で、同じ画面上の広告を見て、反応して、同時に購入することまでできる。そして、このような購入までの流れは、デジタルやストリーミングのサービス、製品に限られるものではない。
メディアミックスが適切であれば、アナログな売り場でアナログな製品を数分で完売することもできる。顧客はただ人さし指で商品を指さすだけでいい。ファッションブランドは長年、先行販売や限定販売においてこのダイナミクスを利用してきた。そしてこれは、より広範なeコマースシステムの縮図にすぎない。メディアはメッセージをはるかに超えつつある。メディアは今、市場そのものになろうとしているのだ。
このメディアの市場化は、必然的に「パフォーマンスマーケティング」のゴールドラッシュを引き起こした。あえてカギ括弧で括っているのは、すべてのパフォーマンスマーケティングがこれに当てはまるわけではないためだ(詳細は2020年2月に寄稿したCampaignのコラムを読んでほしい)。
ゴールドラッシュが起きたのは、ファネル下部のメディアが説明責任を果たしているように見えたためだ。説明責任を果たしているという印象は、「パフォーマンス」メディアが本質的に測定に適しているという事実によって補強されている。ブランドイメージ、親和性、比較検討、魅力などの曖昧な言葉とは対照的に、クリックスルー率、コンバージョン率、コンテンツスコア、再コンバージョン、ハイパーターゲティング、テストと学習、プログラマティック、ユニークユーザーなどの言葉には、どれも科学的な響きがある。
そして、これらすべてがファネルを反転させる圧力になる。長期から短期へ、戦略から戦術へ、つまりファネルの上から下へと予算を落とそうとする圧力だ。普遍的に社会から称賛されることを目指すブランドはこの圧力には屈しない。売ることではなく買われることが常に最善だからだ。価値あるマーケティング投資は、顧客がブランドへと向かう流れを生み出す。これは、持続的なブランド選好や親和性へとつながり、そして根底に隠された不正によって成し遂げられたかもしれない短期的な売上の急上昇ではなく、長期的な利益をもたらす。
もちろん、パフォーマンスマーケティングやトレーディングデスクのハードワークへの投資はこれからも必要だ。インベントリは常に見直す必要がある。価格(3Pの内の一つにすぎないが)も訴求しなければならない。場合によっては、その投資が予算の50%を超え、ファネルが反転することもあるだろう。ちょうど今、そのような瞬間が訪れようとしている。ブラックフライデーの値引き競争だ。とは言え、一年の大半においては、ほとんどのカテゴリーでファネルのバランスは、長期的なブランディングの方に傾いており、基本的にはトップヘビーなファネルとなっているはずだ。
このように説明すると、大手ブランドの予算に偏重した話に聞こえるかもしれないが、それは違う。これは純粋な商業全般の話だ。ほとんどのカテゴリーにおいて、パフォーマンスマーケティングの予算は総投資額の25~45%に収まるべきであり、それ以上になると利益率が低下する。このことを示す経済学的な証拠はいくつもある。非効率はリスクのほんの一部にすぎない。それよりはるかに大きなリスクは、売ることと買われることの魔法のバランスが崩れることだ。そしてそれによってブランドの存続自体が危うくなることだ。このままブランディングとパフォーマンスの予算のトレードオフが続けば、トレードするためのブランド自体がなくなってしまうだろう。
チャールズ・バランス(Charles Vallance)氏はVCCPの会長兼創業パートナー。