本年2月23日に電通より2016年の日本の広告費が発表されました(図1)。インターネット媒体費は1兆378億(前年比112.9%)と初めて1兆円を超え、好調な拡大が続いています。好調な要因として、データテクノロジーを重要視する広告主が増え、データ連携可能な運用型への注目が高まったことや、高機能化によってリーチやブランディングの役割もカバーし始めたことが挙げられています。
4月17日には、電通発表の2016年 日本の広告費を元にさらに細分化した調査結果をサイバー・コミュニケーションズ(以下CCI)と D2Cが発表しました。詳しい内容はそれぞれのリンク先をご覧いただきたいと思いますが、CCIとD2C発表のデータを広告種別にまとめると図2のようになります。
たとえば、アドネットワークも含めてプログラマティックバイイングと解釈すると、インターネット広告媒体費の28%を占めるまでとなります。一定の市場規模に成長してきており、ソーシャルメディア広告を含めて今後さらに成長していくことが予想されます。
一方でDSPを使った広告買い付け(*)をプログラマティックバイイングと解釈するとどうなるでしょうか。
* ビューアビリティーや ブランドセーフティーの確保、アドブラウド排除などテクノロジーを適用したきめ細やかな最適化や、PMP(プライベートマーケットプレイス)を利用した広告枠指定の買い付けを行うこと
運用型のメディアプランニングは、広告主のニーズによってさまざまなタイプのメディアプランとなるので、一概に一括りにすることは難しいですが、あくまで筆者の業務上の経験と現場のメディアプランナーへのヒアリングによる推計で、図3のように細分化してみました。
そうすると、どうでしょう、プログラマティックバイイングの比率はまだまだ小さいことが分かります。
昨今、広告掲載面の品質(ビューアビリティー、ブランドセーフティー、アドフラウド、フェイクニュース、ヘイトスピーチ・コンテンツなど)について、海外のニュースを中心にさまざまなメディアで取り上げられ、話題に上がることが多くなってきました。しかし国内においては、普及以前に関係者の間でも話題に上がることは少なく、業界のスタンダードになっていくには関係者全てが問題意識を持ち、サービスレベルを向上させていくことが必要となるでしょう。
アドネットワーク事業者が透明性や広告掲載面の品質を高めることで、引き続き運用型広告の市場規模を拡大していくか、きめ細やかな品質管理ができるDSPの利用によるプログラマティックバイイングが拡大していくのか、注目されるところです。
(文:新谷哲也 編集:田崎亮子)
新谷哲也氏は、米国のDSP大手「The Trade Desk」の日本におけるカントリーマネジャー。