David Blecken
2017年5月17日

マッシブミュージックが、アジアのハブに東京を選んだ理由

職業への高い倫理観を持つ日本は、五輪開催を控え国際化が進み、魅力的な存在となりつつある。

ムース・ラメルス氏、ハンズ・ブラウワル氏、照井淳也氏
ムース・ラメルス氏、ハンズ・ブラウワル氏、照井淳也氏

アムステルダムに拠点を置く音楽エージェンシー「Massive Music(マッシブミュージック)」は、日本およびアジア市場で事業を展開すべく、このほど東京事務所を開設した。

同社の設立は2000年。ニューヨーク、ロサンゼルス、ロンドン、上海にもオフィスがあり、規模は縮小したものの、精力的な活動を続ける。アムステルダム在住の創立者でCEOのハンズ・ブラウワル氏は、南青山に構えたマッシブミュージックの新しいオフィスで取材に応じ、今後東京が同社のアジア事業の中心になるだろうと語った。

ブラウワル氏によれば、マッシブミュージックは、電通や博報堂といった広告会社や、日本の映画制作会社との関係が強く、最近は日本のクライアントからの引き合いが増えているという。マッシブミュージックは多くの市場でブランドと直接取引をしており、日本でも同様の展開ができると考えている。

多くのグローバル企業が日本に関心を寄せるのと同様、マッシブミュージックも2020年の東京オリンピック・パラリンピックにビジネスチャンスを見出す。同社は北京大会の際にも中国で事業を積極的に展開し、コカ・コーラといったスポンサーの大規模キャンペーンに携わった。しかし同氏にとって、オリンピックのようなイベント開催よりも魅力的に映るのは、日本の仕事を進めやすい環境だ。

上海と比べて日本では、クライアントのアプローチはきっちりと整理され、細部にまで気が配られたものである場合が多く、「日本で仕事をするのは素晴らしいこと」だとブラウワル氏。「顧客は義理堅く、企業間の関係がしっかりと築かれている。個人的なレベルのみならず、仕事のレベルでも情報のやりとりを何度も重ね、それが良い結果に結び付いている。そして、場当たり的な仕事の進め方ではなく、もっと個人的な結びつきがある。そういった密なやりとりに注力するのは、クライアントにとってとても賢いやり方です。多くの市場で見られるような、一方的に(クリエイティブ)ブリーフを提示するようなやり方は、音楽会社である私たちにとって必ずしも満足できるものではないのですが、日本ではそうでなく、良い見本を見せてくれています」

日本で取締役兼エクゼクティブプロデューサーを務める照井淳也氏は、「マッシブミュージックは、海外展開する日本のクライアントにとって、良きビジネスパートナーとなるはず」と語る。同社にとってキーとなるアジアの市場は、他にシンガポール、タイ、韓国があり、いずれもアムステルダムでマネジメントしてきたが、今後は東京から指揮することが可能になったとブラウワル氏は話す。

日本のブランドは国際社会における「ガラパゴス化」から脱却しつつあり、音楽を通して業務にグローバルな視点を取り入れようとしている、と照井氏。同氏はマッシブミュージックに移る前は、サイモン・ル・ボン氏、ヤスミン・ル・ボン氏、ニック・ウッド氏によって設立された音楽エージェンシー「Syn」でプロデューサーを務めていた。

ブラウワル氏によれば、IoT時代にブランドアイデンティティを強化させるサウンドの開発が、今後のマッシブミュージックにとって重要な分野になるという。「多くの製品がインタラクティブなこの時代、音を通じて一貫性を持たせることが重要なのです」

東京オフィスのスタッフは、クリエイティブディレクターで作曲家のリック・サクライ氏、ビジネス開発マネージャーの藤見田門氏、そして照井氏の三名だ。ブラウワル氏も「この美しい国に来ることが、悪いはずはありませんから」と、年に数度東京を訪れる予定だ。

(文:デイビッド・ブレッケン 編集:田崎亮子)

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Campaign Japan

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