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博報堂生活総合研究所アセアンは2月21日、バンコク(タイ)にて、アセアンの生活者に関する最新の研究成果を発表。ミレニアル世代の中にも違いがあることが明らかになった。
アセアン諸国では1980~1990年代生まれの、いわゆる「ミレニアル世代」の存在感が大きく、急増する若者世代人口の大多数を占めている。博報堂生活総研アセアンによる詳細な調査では、1997年のアジア通貨危機やソーシャルメディアの出現のほか、社会情勢や経済状況の大きな変化を経験してきたこの幅広い世代を、ひとくくりに定義するのは極めて難しいとの結論が導き出された。
「今回の研究で最も強調したい点は、ミレニアル世代全体に刺さる万能なアプローチは存在しないということです」と、博報堂生活総研アセアン所長の帆刈吾郎氏。「ミレニアル世代に関する研究の多くは、今起きている事象に注目していました。私たちは調査の対象者を『生活者』として捉え、彼らが過去の人生で経験してきた出来事を全体的に理解することにより、年代ごとの微妙な違いを抽出することに成功しました」。
博報堂生活総研アセアンの根本には、人々を消費行動という一側面のみで捉えて「消費者」と呼ぶのではなく、360度まるごと「生活者」として理解するという哲学がある。その考え方は、アセアン6ヶ国(シンガポール、マレーシア、タイ、ベトナム、フィリピン、インドネシア)で総計1,800名に及ぶ1980年代、90年代生まれのミレニアル世代を対象とした今回の世代間ギャップに関する調査にも、よく表れている。
ミレニアル世代は、広く若者の生活者を指す言葉だ。今回の研究では、ミレニアル世代を年代別に分析し、「キュレーター80s(厳選・編集する80年代生まれ)」と「コンバージェネーター90s(隔てない90年代生まれ)」と名付けた。
世代ギャップへのアプローチ
この2つの年代では、デジタルメディアの捉え方が異なっている。「厳選・編集する」80年代生まれは、インターネットやソーシャルメディアを自分のキャラを作る「ステージ」として捉える。一方、「隔てない」90年代生まれは、拡大し続けるデジタル化を、リアルな世界と「隔てることなく」生活に取り込んでいる。つまり、ヴァーチャルは「リアルな世界の一部」なのだ。
「厳選・編集する」80年代生まれは、様々なデジタルメディアを通して自己表現することを求めている。そこでは、人間関係を非常に意識している様子が見て取れるが、リアルとヴァーチャル、ワーク・ライフ・バランス、そしてプロダクト購入の前後までも明確な線引きがないことの多い「隔てない」90年代生まれと比べると、80年代生まれの方が二面性を持っている。
こうした違いからは、マーケティング上の多くの示唆が得られる。この研究では、「厳選・編集する」80年代にアプローチするブランドは、ターゲット層がベストな自分を見せられるよう刺激する、演出家のように振る舞うべきとの結論を導き出している。一方、「隔てない」90年代生まれは、いつもそばにいてくれる正直な相棒のようなブランドへの反応が良いという。
「厳選・編集する」80年代生まれへのアプローチでは、ソーシャルメディア上で(多くの「いいね」がもらえそうな)アイテム、体験、機会などを提供することが鍵になる。参加者限定イベントへの招待やロイヤルユーザーへのステイタスの付与などもまた、この年代との絆を深めるために非常に有効だ。彼らは自分のステージで主役として輝きたいと思っているが、それは単純に特別な存在になりたいということではなく、デジタルとリアルの両方の世界で、自分が注目されることを願っているのだ。
「隔てない」90年代生まれへのアプローチでは、何を置いても「今」が重要だ。博報堂の生活者データ・マネジメント・プラットフォームの「生活者の情報行動・購買行動」ビッグデータをリアルタイムに関係づけることができるという特性を活用することで、90年生まれに最適なコミュニケーションを即座にとることが可能。ソーシャルメディアで盛り上がってきた事柄にリアルタイムに反応することなどが好例だ。80年代生まれは、このようなコミュニケーションの取り方を目新しいものと認識するにとどまるかもしれないが、90年代生まれはこうした進化を歓迎する。広告リターゲティング、プロダクトやサービスの個人対応など、その瞬間に最大限の自己表現ができるものであれば、90年代生まれを引き込むことができる。
年代別の特徴が示された今、それぞれの年代をどのように誘導するかがマーケターの腕の見せ所だ。ミレニアル世代を一括りにターゲット層として扱うことは、もはや実効性に乏しい。「ミレニアル」という言葉の裏には、あまりに多岐にわたる歴史的背景、生活様式、意見などが含まれているからだ。
「90年代生まれがヴァーチャルな世界をリアルなものとして認識している姿に、私自身も目からうろこが落ちる思いでした」と帆刈氏。「彼らの多くが、ヴァーチャルとリアルの世界は自由に行き来できるものだと考えています。一方、80年代生まれは、やや慎重になる傾向があります。彼らはソーシャルメディアを使いながらも、ヴァーチャルな世界とは一定の距離を置いた付き合い方をしています」「ミレニアル世代を対象とした調査は非常に興味深いものでしたし、こうした生活者の視点が、それぞれ特徴的な二つの年代の違いを明らかにする一助となれば幸いです」。
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