Simon Gwynn
2017年8月22日

メディアエージェンシーとの契約を見直す大手ブランド

メディアの透明性に対する関心は、依然ブランドの間で高い。この1年で世界の主要10社のうち7社までが、メディアエージェンシーとの契約を見直した。

メディアエージェンシーとの契約を見直す大手ブランド

世界広告主連盟(WFA = World Federation of Advertisers)が主要多国籍企業35社を対象に行った最新調査によると、透明性や広告詐欺、安全性といった問題への取り組みでブランドのメディアガバナンスが大きく変化していることが分かった。

WFAはマーケティング分野における世界での支出総額が300億米ドル(約3兆3千億円)を超える35社にアンケートを実施。その大多数が、メディアガバナンスで何らかの対策をとったと回答を寄せた。

WFAによれば、その大きなきっかけとなったのは不透明なビジネス慣行の蔓延を明らかにした昨年6月の全米広告主協会(ANA = Association of National Advertisers)の報告書。

ANAは先週新たな報告書を発表し、この問題が依然解決されていないと指摘した。

WFAのアンケートでは、70%以上のブランドが透明性を向上させるためにメディアエージェンシーとの契約を見直したと回答。更に65%は、プログラマティックの専門家を雇うなどして社内での取り組みを行ったという。

メディアエージェンシーとの契約内容の変更に関しては、29%がメディア及び財務に関する監査権条項を追記。26%はインセンティブの回収、32%がデータ所有権に関する条項を加えた。


また広告詐欺への対策では、43%が主要指標をCPM (インプレッション単価)からビジネス成果に変更。そのための社内的取り組みを行ったブランドは40%だった。

一方、約4分の3(74%)のブランドが不要なリスクをもたらす可能性があるアドネットワークへの出費を一時停止、また第三者機関による検証をさせないアドネットワークへの出費を制限している。残りの14%もこうした停止や制限を予定しているという。

安全性がより重要なアジェンダに

大手ブランドの広告がテロリストの動画やポルノ画像と並列して配信されていると英タイムズ紙が報道し、多くのブランドがユーチューブ上の広告掲載を中止してから半年。WFAの報告書は安全性を重視するブランドの姿勢がより増していることを示す。

最優先課題として47%のブランドが挙げたのは、「透明性」。次に多かったのは「ブランドの安全性」で、70%がよりその重要性が増したと答えた。

ビューアビリティに関しては、63%が業界基準にのっとったビューアブルインプレッションにのみ支出し、37%はビューアビリティに関する独自の基準を策定したという。

「我々は長年、ブランドとそのパートナーであるエージェンシーの間に明快かつ透明な関係が構築されるべきだと訴えてきました」。こう語るのはWFAのマーケティングサービス責任者であるロバート・ドレブロウ氏。

「昨年のANAの報告書で、加盟企業がブランドの安全性や広告詐欺など、多くのメディア関連の課題に強い関心を持っていることが示された。これが米国だけでなく世界中のブランドの行動を喚起し、新たなうねりが起きたのです」

「こうした動きで『透明性が向上した』と考えるWFA加盟企業が増えており、ブランドやそのパートナーであるエージェンシー、メディア企業がより健全なメディア環境を構築する上で良い兆候となっています」

この1月、P&Gのマーク・プリチャード最高ブランド責任者(CBO)は米・インタラクティブ広告協会(IAB = Interactive Advertising Bureau)の年次会合で広告の透明性を強く訴えるスピーチを行い、大きな注目を集めた。これを受けて透明性やビューアビリティ、第三者機関による検証、そして広告詐欺などが世界のマーケティング業界での最重要課題に浮上した。

だが先週、英国の広告業者団体IPA(Institute of Practitioners in Advertising)のポール・ベインズフェアー事務局長はフェイスブックとグーグルに宛てた書簡の中で、「両社はデジタルメディアの世界を複占しているにもかかわらず、広告主が直面する脅威への対応が遅すぎる」と非難した。

(文:サイモン・グウィン 編集:水野龍哉)

提供:
Campaign UK

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