景気後退が迫り、広告費の伸びが2022年より鈍化すると予測されているにもかかわらず、メディア企業の幹部らは2023年について楽観的な見方を示している。
ITVでコマーシャル担当マネージングディレクターを務めるケリー・ウィリアムズ氏は、Campaignが先ごろ開催したブレックファーストブリーフィングで、新しいストリーミングプラットフォーム「ITVX」や新作コンテンツ等への投資が、2023年の業績を後押ししてくれるだろうと語った。これに先立ち、電通は、2023年のリニアTVの広告費は横ばいになるとの見方を示していた。
「経済的な逆風によって何らかの影響は出るだろうが、今回の不況は以前のものとはやや異なると思う」と、ウィリアムズ氏は言う。
「企業の収益性はかなり持ちこたえており、完全雇用も続いている。したがって、2023年下半期にはインフレも制御できるようになり、経済は比較的早く回復する可能性があると考えている。私たちは今、そのための準備を進めている」
ウィリアムズ氏は、ストリーミングがTVの「成長エンジン」になると述べ、その一例として、ITVが2022年12月にスタートした新しいストリーミングプラットフォーム「ITVX」を挙げた。
同氏は、次のように述べている。「まだ1カ月しか経っていないが、かなり良い兆候が見られる。メディア消費は98%増え、月間アクティブユーザー数も85%増加した。そのため、私はこれからの1年を前向きに考えており、かなり楽観視している」
ウィリアムズ氏は、過去のCampaignの取材で、ITVXでは番組数が、以前のストリーミングプラットフォーム「ITV Hub」より増えるため、広告主に提供される広告インベントリも増加するだろうと述べている。また、ITVが現在提供中の広告販売プラットフォーム「プラネットV」から、セルフサービス方式で広告を購入したり、ターゲティングしたりできる機能が利用できるようになると説明していた。
ハーストの最高コマーシャル責任者で、やはりこのブレックファーストブリーフィングに参加していたジェーン・ウォルフソン氏も、パブリッシャーは以前の不況期より経済的ショックに強くなっていると述べ、楽観的な見方を示した。こうした見通しを支えている要素の一つが、ハーストが先ごろ立ち上げたエクスペリエンス部門「ハーストX」だ。
「私たちが提供しているコンテンツの多様性は、前回の不況期とは大きく異なっている。当時は提供できるものが今よりずっと画一的だった。私たちの(雑誌)ブランドはどれも単一のプラットフォームに縛られていたが、もはやそのようなことはない」と、ジェーン氏は言う。
「私はこれまで、(製品の)革新と多様化によって厳しい時期を乗り越えてきた。同様に、データという観点からは、オーディエンスを知ることが極めて重要であり、そのおかげで正確な読者像を描くことが可能になった。私たちはオーディエンスと直接的な関係を築くことで、彼らのニーズが何なのかを十分に把握できている」
スポティファイでEMEA(欧州・中東・アフリカ)地域の販売責任者を務めるラク・パテル氏は、「手放しに楽観視するのは危険だ」としながらも、この業界には楽観的になる理由があると述べた。
「私たちの業界では、インスピレーションと情報と影響力がものをいう」と、パテル氏は言う。
「私たちが楽観的なのは、最良のクライアントとのパートナーシップを通して、常にビジネスを革新していくことができるからだ」と、パテル氏は語った。
「デジタルオーディオやポッドキャストについて考えるとき、極めて重要なことは、それが、デジタル動画がこの15年間に辿ってきた行程と非常によく似た道のりを歩んでいるということだ(中略)それは、スケール、広告体験、インタラクティブ性、そして測定といった各面に見出されるだろう」(パテル氏)
パテル氏によると、EMEA地域では、ポッドキャスト広告費が2023年末までに15億ユーロ(約2080億円)に達する見込みだという。また、英国とEMEA地域では、この1年でスポティファイの人員規模は2倍になった、と同氏は付け加えた。