世界広告研究センター(WARC)は、世界の広告費は、2022年には8.3%増加するものの、2023年には市場成長率が2.6%にまで減速するという新たな予測を発表した。
WARCの予測によれば、2022年の広告費は世界全体で8810億ドル(約122兆2700億円)だ。しかし、2023年の世界の広告費は、市場の減速により、9040億ドル(約125兆4600億円)にとどまる見込みだ。
この数字は、WARCが今年から来年にかけての広告市場の成長規模を、従来予測から900億ドル(約12兆4900億円)近く引き下げたことを意味している。
2022年の広告費は、米国の中間選挙の後押しによる増加を見込んでおり、さらに、年末に開催されるFIFAワールドカップ男子サッカーによる伸びも期待されている。
だが2023年は、経済の不確実性とサードパーティCookie廃止の動きに伴い、市場の成長は鈍化する見込みだ。
WARCのデータ、インテリジェンス、および予測担当ディレクターで、今回の調査レポートの執筆者でもあるジェームズ・マクドナルド氏は、「世界中で生産活動の伸びが半減し、供給サイドの圧力がインフレを促進している。こうした景気の減速が、今年から来年にかけて広告市場に流れ込むと見込まれていた広告予算から、900億ドル近くを奪い取ることになった」と述べている。
特にソーシャルメディア企業は、サードパーティCookie廃止の影響をダイレクトに受けそうだ。アップルの動きだけでも20億台のデバイスでサードパーティCookieがブロックされるため、ソーシャルメディア企業は2023年までに400億ドル(約5兆5500億円)近い収益を失うことになるだろう。
ソーシャルメディア大手のメタは、2022年第2四半期に初めて広告収入の減少に見舞われるなど、すでに大きな圧迫を受けている。
「アマゾン、グーグル、アップルなど、ファーストパーティデータを豊富に保有しているプラットフォームは、ROI重視の風潮の中でも一定のパフォーマンスを発揮できるため、逆風を切り抜けるには有利な立場にある」と、マクドナルド氏は語った。
生活費の高騰にも関わらず、2023年に広告費を削減すると予想される製品分野は、WARCが調査している18分野のうち、輸送・観光、アルコール飲料、金融サービス、自動車の4分野にとどまる。
一方、WARCが調査している全分野の中で、市長成長をリードするのはテクノロジーと電子機器になる見込みで、2022年~2023年の広告費は、この両分野だけで合計851億ドル(約11兆8100億円)にものぼる。
WARCの新たな予測は、全世界100市場の調査結果に基づく。