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オフィス再開に向けた、エージェンシーCEOの見通し
コナー ブロードリー(資産管理会社)が英エージェンシーの財務責任者を対象に実施した調査によると、6割以上が、オフィスの再開は9月以降になると考えているという。第1回目の調査(4月上旬に実施)では17%で、1カ月間で意識が大きく変わったといえる。
WPPのマーク・リードCEOは社内に宛てた文書で、オフィス再開は時間をかけて慎重に行う考えを表明した。新型コロナウイルスを取り巻く状況は、世界各地で異なる。112カ国にオフィスを構える同社としては、再開のタイミングを確定することは「非常に難しい」と述べた。「アジアや欧州の一部の市場では、オフィスを再開して社員も戻ってきています。一方でロンドンやニューヨークなどについては、たとえ再開しても多くの社員が戻ってくることは、9月あるいは10月以降までは期待していません。もっと遅くなる可能性もあります」。オフィス勤務の再開は、個々の事情や通勤経路の安全性などを考慮に入れ、自主的かつ柔軟なものとすることも併せて記された。「変化した世界の中で社員やクライアントのニーズに基づき、将来を見据えて我々の事業展開を再設計していきます」
オムニコムグループのジョン・レンCEOも社内宛てのメールで、「各オフィスの再開は、自治体や公衆衛生当局の許可に基づいて決定し、それよりもさらに時間をかけて実施します」と計画を発表した。安全にオフィスに復帰するためのガイドラインも策定中で、オフィスで勤務するスタッフの数をまずは25%に抑え、50%、100%と引き上げていく。体温のチェック、マスクの着用、握手をしない、小さな会議室を使用しないといった社内エチケットの徹底を呼び掛ける。出社に不安を感じる間は在宅での勤務を認める他、在宅勤務期間がかなり長期化する社員もいることを考慮し「自宅での勤務環境を改善する方法を検討しており、近いうちに皆さんにお伝えしていく予定です」と記した。
インターパブリック・グループのマイケル・ロスCEOは「あわててオフィスに戻る必要はない」と社内宛てのメールで明言した。「95%の社員が自宅で勤務しても、クライアントにサービスを提供できることが今回明らかになりました。つまり、私たちよりも先に職場に戻ると考えられる小売業、製造業、接客業など他業界の動向を注視しながら、学んでいくことができるわけです」
理不尽な支払遅延に立ち向かうため、世界各地の広告業協会が結集
4A(米国)、IPA(英国)など11の広告業協会が結集し、VoxCommを立ち上げた。声明によると、「社会的責任を果たしている」とされる企業が、新型コロナウイルスを口実に広告会社への支払いを遅らせているケースが、世界各地の広告会社から報告されているという。「支払いの遅延は、キャッシュが潤沢な企業でさえも流動性比率(短期負債の支払能力を示す)が高いように見せようとする悪しき習慣」であり、クライアント企業のCSRの考え方と大きく矛盾すると指摘している。
広告会社の支出の多くは人件費だが、クライアントからの支払が遅れるということは、社員や下請け会社、フリーランサーへの支払が遅れる原因となる。しかも、「一部のクライアントは財政的な苦境に立たされているが、多くの場合は“支払えない”のではなく“支払わない”のです」と、IPAを率いるポール・ベインスフェア氏はCampaignに語る。既に動き出しているプロジェクトを一方的に中止した挙句に支払いを拒否するケースもあるといい、「このようなことが続けば、窮地に陥る広告会社もいくつか出てくるのでは」と懸念する。
ロックダウン中の都市でのびのびと暮らす動物たち
世界各地で人々が自宅にこもるようになった今、動物たちが都市でのびのびと過ごす様子を描いた動画を、WWFインドが公開した。「この惑星が私たちだけでなく、野生動物のためのものでもあることを思い出させる動画です。生物多様性によって自然のバランスが保たれ、変化に対応する安全かつ持続可能な世界が実現しているのです」と語るのは、マーケティングコミュニケーション担当ディレクターのヒマンシュ・パンデイ氏だ。「ロックダウン(都市封鎖)が解除され、自宅から屋外に出てからも生物多様性を守り、自然と人間が共生する持続可能な世界を作っていきましょう」
【お知らせ】
● 6月2~3日の2日間に開催を予定しているライブストリーミングイベント「Campaign Connect」の講演者一覧(英語)を公開しました。ぜひお見逃しなく!
● PRアワード・アジア2020の一次審査を通過したショートリスト(英語)を公開しました。最終審査結果は、6月11~12日に発表となります。
(文:田崎亮子)