Ryoko Tasaki
2024年8月30日

世界マーケティング短信:オムニコム、クリエイティブエージェンシーを統合

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

トロイ・ルハネン氏(写真提供:オムニコム)
トロイ・ルハネン氏(写真提供:オムニコム)

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

クリエイティブエージェンシーの統合でスケールメリット活用へ

オムニコム(Omnicom)が1月1日から、傘下のクリエイティブエージェンシー(BBDO、TBWA、DDBなど)をオムニコム・アドバタイジング・グループ(Omnicom Advertising Group, 通称「OAG」)に統合すると発表した。OAGのCEOには、TBWAワールドワイドCEOのトロイ・ルハネン氏が就任する。

この統合は、クリエイティブ業界を一変させたAIやDX(デジタルトランスフォーメーション)に対応するもので、生成AIやデータなどの技術にスケールメリットを活かした投資を行い、競争上の優位性につなげる。各エージェンシーの合併や廃止は予定していない。またソリューションの提案は、顧客のニーズに応じてOAGとして、あるいは個別のエージェンシーとして行う。

ルハネン氏によると、OAGはオムニコム傘下のエージェンシーブランドを強化しつつ、世界的なネットワーク内のツールや技術、人材へのアクセスを拡大することを目指している。「人材がエージェンシーの文化に魅力を感じていること、そしてクライアントが多くの選択肢があることを好むことは理解しています」と同氏。「しかし私たちには、規模を有効に活用する力があります」。

The MonkeysDroga5傘下に グローバルCEOにグリーン氏

アクセンチュア ソング(Accenture Song)のクリエイティブ部門であるザ・モンキーズ(The Monkeys)が、12月1日からDroga5の傘下に入る。ザ・モンキーズは豪シドニーを本拠とするクリエイティブエージェンシーで、2017年5月にアクセンチュア ソング傘下となった。

ザ・モンキーズのCEOであるマーク・グリーン氏が、Droga5のグローバルCEOに就任し、デイビッド・ドロガ氏はアクセンチュア ソングのグローバルCEOを引き続き務める。

マーク・グリーン氏

ブランドセーフティーに万能の解決策は無い

X(旧ツイッター)が広告主団体などを反トラスト法違反で訴え、その二日後に世界広告主連盟(WFA)が運営する「責任あるメディアのための世界同盟(GARM)」が閉鎖した。GARMはブランドセーフティーや、広告に隣接するコンテンツについてのフレームワークを作成し、有害な広告を6.1%(2020年)から1.7%(2023年)に削減するのに貢献したと同団体は主張する。「GARMは小規模な非営利の組織であり、その目的や活動を誤解した申し立てによってリソースや資金が大幅に枯渇したのは残念なこと」とのコメントをWFAは発表した。「そのためWFAはGARMの活動を停止するという難しい判断を下しました」。

だがGARMのような団体には、真に有意義な変化を起こす力はない、とジェリーフィッシュ(Jellyfish)のパートナーであるジェフ・マティソフ氏は言う。ブランドセーフティーは、各ブランドの要望によって個々に決める必要があるからだ。「測定可能な事業で何が成果を上げているか、将来の戦略は何か、ブランドをどのように展開していきたいかに基づいて、ブランドは今後も判断を下すでしょう。GARMに限らずどのような団体も支援や主張をすることはできますが、結局のところ重要なのはお金なのです」。

また「認定」によるブランドセーフティーの担保は、一部のクライアントにとっては割に合わない費用が発生する可能性があると、ノーブル・ピープル(Noble People)のダニー・ワイスマン氏は指摘する。一定のブランドセーフティー基準を満たす代わりにインプレッション単価が高くなる場合に、多くのブランドはこの選択をしないという。

ブランドセーフティーに関するもう一つの問題は、ニュースサイクルが絶えず変化し、ブランド毀損のリスクを事前に把握するのが困難なことだ。キャプティベイト(Captiv8)共同設立者のクリシュナ・サブラマニアン氏によると、例えば安全とみなされていたインフルエンサーに、不可抗力によって批判が集中することがあるという。また現在のブランドセーフティーの技術では、過去の発言を把握することは可能だが、リアルタイムで監査するのは難しい。

一方、ブランドセーフティーの問題は「広告主のために十分な努力をしていないと考えるプラットフォームから、撤退するための口実のようなもの」とワイスマン氏。広告主がブランドセーフティーを理由に撤退したとX側は主張するが、そもそもXはダイレクトレスポンス広告のチャネルとして良いパフォーマンスを発揮していなかったという。そして景気後退への懸念から、広告費が削減されたことも影響した。

標準化や厳格なルールは、ブランドセーフティーの万能なソリューションではない。個別の対応と、人間と機械による監視が鍵となり得る。「テクノロジーは役立ちますが、新しいサイトやプラットフォームが登場したり、物事が変化したときに精査し、自分たちが何をしたいのかを常に把握する人材も必要です」とマティソフ氏は語る。

ブランドセーフティーの実現には、ブランドと広告プラットフォームの直接的なパートナーシップが必要だというのがワイスマン氏の考えだ。ブランドが団結して安全な環境を強く求めると、プラットフォーム側にはコスト効率の高いソリューションを提供する動機付けとなる。「ブランドセーフティーを優先せず、違法コンテンツや不道徳なコンテンツ、安全でないコンテンツと提携したいのか? あるいは単にビジネス上の成果を上げたいだけなのか? 現時点では、両者は相容れないものだと私は考えています」。

CMOよりも危険な役職はDEIのみ」 ギャロウェイ教授

ニューヨーク大学スターン経営大学院でマーケティングを教え、世界的に有名な連続起業家でもあるスコット・ギャロウェイ教授が、豪州で開催されたフォーラムに登壇し、DEI(多様性、公平性、包摂性)の取り組みが「人種の逆差別をもたらす」と主張し、物議を醸した。

昨年の「CMOという肩書は18カ月以内に終焉する」という発言について尋ねられた同氏は、「現時点でCMOよりも危険な役職は、DEIのみだと思います」とコメント。自身が大学に通っていた1960年代は「プリンストン、ハーバード、イェールを合わせても黒人はわずか12人」だったことから積極的格差是正措置は理に適っていると語った。

「米国では、女性を有利に扱っています。でも白人以外の人々は常に不当な扱いを受けてきました。同性愛者を迫害し、日本人を強制収容所に送ったのです。それが今や、DEI担当役員や企業や大学は人口の76%(女性やマイノリティグループ)を優遇するようになりました。人口の76%を優遇するということは、誰かを優遇することにはなりません。残りの24%を差別しているという、奇妙な状況に陥っています」。

そして積極的格差是正措置は重要だが、人種ではなく社会経済的な要因に重点を置くべきだと同氏は考えている。大学入試では低中流階級出身の若者を、そして企業も「非エリート大学の卒業生」の雇用を優先すべきだと説く。「企業や大学が人種に基づく積極的差別是正措置をとると、現時点では問題を解決せず、より多くの問題を引き起こすと思います」。

Xbox、カスタマイズ可能なジョイスティックを発表

マイクロソフト(Microsoft)は、動きに制約のあるゲーマーのニーズに対応した「Xboxアダプティブ・ジョイスティック」を発表した。ボタンのマッピングをアプリで行える他、さまざまな形のサムスティックを3Dプリンターで出力して交換することができる。

また、このコントローラーの動画をソーシャルチャネルで公開した。105秒の動画には3名のゲーマーが登場し、コントローラーをそれぞれの方法で使用してプレーする様子が描かれる。制作はマッキャン・ロンドン。

「アダプティブ・ジョイスティックは単なるハードウェアではなく、メッセージです」と語るのは、マッキャン・ロンドンのクリエイティブディレクター、ジム・ニルソン氏だ。「これは包摂性やエンパワーメント、そして人々にゲームへのアクセスを提供するということ。プレーする誰もが勝者になれるのです」。

(文:田崎亮子)

 

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Campaign Japan

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