Ryoko Tasaki
2022年12月02日

世界マーケティング短信:カタール、広告禁止でロンドン投資を見直し

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:カタール、広告禁止でロンドン投資を見直し

ブレア元英首相、カタール関連広告の禁止は「ジェスチャー」

ロンドン交通局(TfL)は市内の地下鉄やバスなどへの、サッカーワールドカップ(W杯)開催国カタールの広告掲出を禁止した。この件で、カタールはロンドンへの投資を見直している。カタールは政府系ファンドを通じてロンドンに巨額を投資しており、ハロッズカナリー・ワーフ、ザ・シャードなどを所有する。

TfLでは2019年より、同性愛行為で死刑が適用される可能性があるとILGA(国際レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー・インターセックス協会)が挙げた国については、関連する広告を審査しており、その中にカタールも含まれている。今回禁止になったのは、カタールへの観光を誘致する広告や、W杯のチケット販売に関する広告。一方で、W杯のテレビ放送や、チームを応援する内容の広告は掲出が認められる可能性が高い。

28日のポッドキャスト「ザ・ニュース・エージェント」に登場したトニー・ブレア元英首相はこの話題に触れ、「私たちは行き過ぎてしまう危険性があると思う」と述べた。そして、カタール関連の広告禁止はジェスチャーポリティックス(見せかけの政治活動)なのかと番組ホストから尋ねられ、「率直に言うと、そう思います」と回答。政府機関はLGBTの権利などの問題に対して一貫した立場をとるべきであること、そして外国選手が多様性を象徴する「OneLove」の腕章を着用しても進歩的な変化を促進するとは思わないと語った。
 

アップル社を痛烈批判したマスク氏、本社を訪れ「誤解はとけた」

イーロン・マスク氏は29日、アップル社への不満をツイッターに投稿した。内容は「アップル社はツイッターへの広告掲載をほぼ停止した。米国における言論の自由を嫌っているのか?」というもので、アップル社のティム・クック氏をタグ付けして「いったい何が起こっているのか?」と説明を求めた。ワシントン・ポスト紙によると、アップル社はツイッターのトップ広告主の一つで、2022年の第1四半期には4,800万米ドル(約65億円)の広告費を投じたとされる。

マスク氏はさらに「アップル社はAppStoreで購入するすべてのものに30%もの秘密の税金を課しているのはご存知?」「アップル社はツイッターをAppStoreから削除すると脅してきた。理由は教えてくれない」といった内容を次々とツイートしていた。

だが12月1日になって、アップル本社を訪れクック氏に会ったことを明らかにした。AppStoreからの削除については「アップル社は考えたことがないとティムが明言した」とし、誤解は解消したとのこと。美しい本社を案内してくれたことに感謝するツイートに添えられた動画には、両氏と思しき人物の影も映り込んでいた。


W杯期間中のDV 阻止に必要なのは周りのサポート

ランカスター大学が過去に実施した調査によると、英ランカシャーではW杯のイングランド戦の日にドメスティックバイオレンス(DV)が、勝利あるいは引き分けの日には試合のない日と比較すると26%増、負ければ38%も増加した。サッカーがDVを必ずしも引き起こすわけではないが、アルコール摂取量の増加や感情の高ぶりが、既に発生している虐待を増幅させるという。

そこで英慈善団体「ウィメンズ・エイド(Women’s Aid)」は、国連が定める「女性に対する暴力撤廃の国際デー」(11月25日)に合わせてキャンペーンを展開。W杯期間中のDVを終わらせるためには、周りのサポートが必要であると訴えかける。制作はハウス337(House 337)。

なお、動画内でガレージに掲出されたイングランド旗にある「He’s Coming Home」は「彼が帰ってくる」という意味だが、イングランド公式応援歌の歌詞に繰り返し登場するフレーズ「It’s Coming Home」に引っ掛けてもいる。

エージェンシー・オブ・ザ・イヤー2022、日本・韓国地域の結果発表

Campaign Asia-Pacificが選ぶ2022年の「エージェンシー・オブ・ザ・イヤー(AOY)」の、日本・韓国地域の結果が発表された。日本で「クリエイティブ・エージェンシー・オブ・ザ・イヤー」金賞に輝いたのはビーコン・コミュニケーションズ。多くの賞を獲得したのは、UMとアクセンチュア ソングだった。詳しくはこちら(英語)から。

(文:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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