1. 電通への罰金刑を疑問視する海外メディア
10月6日、東京簡易裁判所で電通の違法残業に対する罰金刑が言い渡されると、海外メディアは一斉に「50万円ではあまりにも少ない」と報じた。確かにそうなのだが、今回の判決の核心は金額ではない。電通はこれとは別に、自殺した高橋まつりさんの家族と1月に金銭面の補償で合意をしている(詳細は未発表)。肝心なのは、違法残業を止めることができなかった電通に対し公の「裁き」が出たことであり、これは広告界にとどまらずあらゆる企業への重いメッセージとなろう。判決の最後では、利益追及よりも社員の幸福が優先される企業文化が今後広がっていくことへの期待が、裁判官より述べられた。
2. 銃犯罪に対するWPPの「矛盾」
ラスベガスで銃乱射事件が起きたばかりだが、長年米国における銃規制を阻んできた全米ライフル協会に、WPPが多大なサポートをしてきたことが明るみになった。これは同社がサステナビリティ(持続可能性)報告書で表明した、銃犯罪を糾弾する姿勢とは相反する。マーケティングサービスプロバイダーがあらゆる企業ビジネスで信頼性を説く時代、こうした明らかな二重基準はクライアントの仕事における倫理性を改めて問い正すものだ。
3. 「恐れを知らない少女」の裏で
もう1つの「不都合な真実」が発覚した。米金融サービス大手ステート・ストリートは、女性及びアフリカ系社員に対し不当に安い賃金を払っていたという申し立てを受け、500万米ドル(約5億5千万円)の支払いに同意した。同社はこの春、男性中心社会を批判する銅像「恐れを知らない少女(Fearless Girl)」をニューヨーク・ウォール街に設置。カンヌライオンズで最高賞を獲得し、多様性を象徴する企業と見なされていた。このニュースは、ビジネス界における性・人種差別を是正するにはまだまだ長い時間がかかることを示す。ブランディングで「平等」を唱える企業に対し、我々は健全な疑念を持ち続けなければならないだろう。
4. 広告の過度な露出は、ブランドの浪費
グーグル傘下のインターネット広告配信「ダブルクリック」のディレクターを務めるフィリップ・マイルス氏は、ロンドンで行われたイベントの席上、「複数のDSP(デマンドサイドプラットフォーム)やネットワークを介した広告のインプレッション数は、同じユーザーに対して18にも上り、それに対して広告料を払うのはブランドにとって浪費。最適なのは2」と語った。ケーススタディーの結果によると、平均で広告を2.3回見たユーザーが行動を起こす可能性が最も高く、8.4回以上見たユーザーのそれは65%に落ちるという。
5. スマートスピーカーが買い物のスタイルを変える
英スーパー大手テスコでオンラインビジネスのディレクターを務めるラファエル・オルタ氏は、「スマートスピーカーを使って買い物をする人々は、その都度ではなく、数日間かけて商品のリストを作ってからまとめて注文する」と語った。スマートスピーカーは、特に牛乳など欠かすことのできない食品・飲料の購入に利用されているという。こうした利用者はまだ千人単位だが、今後急速な伸びが予想される。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)