Ryoko Tasaki
2024年8月02日

世界マーケティング短信:豪記者500人が五輪開幕直前にストライキ

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

写真提供:MEAA
写真提供:MEAA

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

「ジャーナリズムを燃やすな」 豪主要紙の記者がストライキ

豪主要紙のジャーナリスト約500人が、パリ五輪開幕の前日から5日間のストライキを敢行した。ストライキに踏み切ったのはナイン・エンターテインメント(Nine Entertainment)の新聞『ジ・エイジ(The Age)』『ザ・シドニー・モーニング・ヘラルド(The Sydney Morning Herald)』などの記者。同社はパリ五輪に社員200人を派遣している。

同社は6月末に、5000人いる社員のうち最大200人を削減する計画を発表している。このうち最大90人が新聞部門の人員だという。これまで数カ月にわたって賃上げの交渉を続け、ストライキ敢行の直前には経営陣から賃上げを提示されたが、インフレ率(4%)に見合わないと拒否していた。

クリエイティブ業界に携わる人たちの組合「MEAA(The Media, Entertainment and Arts Alliance)」の局長代理を務めるミシェル・レイ氏は「ナインのジャーナリストたちは、報酬に見合わない多くの仕事を求められています」とコメントした。

また、ジ・エイジのメルボルン支局に勤める記者はソーシャルメディアに「ストライキを行って最大5日間の給与を(このような経済状況の中で!)放棄することの代償は大きいですが、質の高い仕事無くして質の高いジャーナリズムは得られません」と投稿した。

一方、同社CEOのマイク・スニーズビー氏はパリで22日に、聖火リレーランナーを務めている。「会員たちが交渉に取り組み、冬の豪州で人員削減のストレスに対処している間に、スニーズビー氏が太陽の降り注ぐフランスで聖火リレーを楽しんでいることには、一層の腹立たしさを覚えます」とレイ氏。「私たちの会員からスニーズビー氏へのメッセージは非常にシンプルです。優先順位を正しく決め、ジャーナリズムを焼き尽くさないでほしい」。

ストライキは31日、初年度4%、2年目と3年目は3.75%の賃上げや、報道局でのAIの倫理的な使用、フリーランサーが賃金と労働条件に関する公正な扱いを受けられるようにすることで合意に達し、収束した。

カンヌライオンズ運営のアセンシャル、インフォーマが買収

カンヌライオンズを運営するアセンシャル(Ascential)を、英インフォーマ(Informa)が11.6億ポンドで買収した。インフォーマは展示会やメディアを手掛ける大手企業で、FTSE100(ロンドン証券取引所に上場する時価総額が大きい100社)の銘柄に選ばれている。

アセンシャルはFTSE250銘柄で、2018年にワーク(Warc)を買収している。2023年のアセンシャルの収益は1.69億米ドルで、そのうちカンヌライオンズが1.31億米ドル、ワークが2972万米ドルだった。また昨年11月には傘下のフライホイール(Flywheel)をオムニコムに売却している。

IPG、第2四半期のオーガニック成長率は+1.7%

インターパブリック・グループ(IPG)が第2四半期の決算を発表し、総売上高は27.1億米ドル、オーガニック成長率は+1.7%だった。純利益は2.1億米ドルで、前年同期比-19.2%。

クリエイティブ事業(マッキャン・ワールドグループ、IPGヘルス、マレンロウ・グループなど)は第1四半期から引き続き好調で、純収益は9.1億米ドル(前期比+3.3%)。メディア・データ・エンゲージメント事業(IPGメディアブランズ、アクシオム、MRM、R/GAなど)は10.6億米ドル(同+0.8%)、専門的なコミュニケーションを扱う事業(ウェーバー・シャンドウィック、ゴリンなど)は3.5億米ドル(同+1.3%)だった。

地域別にみると、純収益のオーガニック成長率は英国+3.4%、欧州大陸+6.3%、中南米+4.1%、米国+1.3%、唯一減少したアジア太平洋は-2.4%、その他地域+1.5%。IPGのフィリップ・クラコウスキーCEOは、業績について「前年同期に比べてオーガニック成長や利益率がゆるやかに伸長し、堅調だった」と述べた。

ハヴァス、米国以外の市場でプラス成長

仏メディア大手のヴィヴェンディ(Vivendi)が決算を発表し、傘下のハヴァス(Havas)の上半期の純収益は13億ユーロ(前年同期比+3.4%)だった。買収したアンコモン・クリエイティブ・スタジオ(Uncommon Creative Studio)やEプロフェッショナル(Eprofessional)などのエージェンシーが、成長に貢献したという。

地域別では欧州+3.8%、アジア太平洋+0.5%、中南米+8.8%と、北米(-6.4%)以外の地域で伸長した。なお、ヴィヴェンディは複数部門の分割を引き続き検討している。

【お知らせ】

●アジア太平洋地域のマーケティング・コミュニケーション業界で輝かしい業績を上げた女性40人を選出する、Campaign Asia-Pacific主催「Women to Watch 2024」がエントリーの受付を開始しました。早期エントリーは8月15日、通常エントリーは9月3日まで。詳しくはこちら(英語)をご覧ください。

●来週は「世界マーケティング短信」の配信をお休みさせていただきます。

(文:田崎亮子)
 

提供:
Campaign Japan

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