コロナ禍で中国企業は海外展開に新たな課題を突きつけられたが、「グローバル化」の野望は一向に衰えていない。中国の2019年および今年第1四半期における国内総生産(GDP)は6.1%で、29年ぶりの低水準だった。今年はさらなる減速が予想され、それを埋め合わせるため中国企業は海外での事業拡大に意欲的だ。今後は多国間にわたるM&A(合併・買収)やアパレル市場の拡大がより活発になろう。
世界的コンサルティング会社ブランズウィックが行った調査「中国企業のグローバルオピニオンを理解する」では、中国企業が直面する課題がいくつか浮き彫りになった。調査はコロナ禍が起きる以前の昨秋実施されたが、その点を差し引いても結果は十分的を得たものだ。調査対象は23カ国・9700人の一般市民と300人の中国企業トップ。中国国内から投資機会をうかがう非中国系企業や海外成長を図りたい中国企業、双方にとってこの調査結果は有意義なものだろう。
中国最大のターゲットは米国
調査によると、国内景気の減速を受けて中国企業は輸出や海外M&A・投資に注力しつつあるようだ。興味深いのは、米中間の貿易摩擦にもかかわらず、中国企業トップの多くが海外進出の最大のターゲットとして米国市場を挙げていること。他のアジア諸国や豪州を挙げる者も多かった。だが、米国の中国企業に対する印象は悪化している。その要因の一端は、過去1年間で米国メディアの中国批判が急増したことだ。
新興国での「好感」、先進国での「不信」
先進国市場での信用が落ちている中国企業だが、新興市場では歓迎されてきた。その裏には、新興国の中国政府への下心が透けて見える。近年、米英などは中国批判を強めるが、アフリカや東南アジアの国々は喉から手が出るほど欲しい経済援助を中国から獲得してきた。先進国と新興国では中国企業に対する印象が大きく異なり、その差が広がりつつあることを中国企業は認識すべきだろう。
情報開示で信頼確立を
透明性や従業員の待遇、コミュニティーへのエンゲージメントといった重要な点で、中国企業は先進国でも新興国でも評価が低い。だが、情報開示を進めれば各国民からより信頼を得られることを調査結果は示した。コロナ禍によって、中国上場企業にはより高い透明性が求められるようになった。透明性とエンゲージメントを向上して信頼を築くことが、国際的成功を収める上では欠かせないだろう。
(文:ゼン・リョウナン 翻訳・編集:水野龍哉)