今年の東京モーターショーは、日本の自動車産業の土台が大きく揺らぐ中での開幕となった。世界最大の自動車メーカーであるトヨタ自動車は、単なるメーカーを超越したリブランディングに着手。日産自動車とスバルは、新車検査の不手際による逆風の最中にある。
報道によれば、日産は車両製造の検査工程に関する日本の法令に40年近くも違反してきたという。スバルも30年以上にわたり、無資格の従業員が完成検査に関わってきた。
スバルは来週をめどに、再検査のため25万5千台のリコールを国土交通省に届け出る予定。同じく日産は、国内で製造された特定の車両に関してリコールを実施すると発表した。ただし、「海外で販売する車に関しては問題ない」と同社広報は述べている。
この不正問題は国内の出来事とは言え、“メイド・イン・ジャパン”のブランドを傷つけかねない。神戸製鋼所の不祥事がいまだ収まらない中、その可能性はなおさらだ。同社が性能データ改ざんを認めたアルミ・銅製品は、他の重工業メーカー同様、自動車メーカーにも使用されている。
全ての案件は現在も調査中で、各ブランドや日本の製造業に対する信頼にどれだけダメージを与えるのか、まだ判然としない。欠陥エアバッグによって6月に経営破綻に追い込まれた自動車部品メーカーのタカタを始め、近年“日本株式会社”は数多くのスキャンダルに見舞われてきた。だが、依然として日本企業は高品質と信頼性の証と広く見なされている。
事業変革コンサルティングを専門とするレランサ(本社・東京)の創業者スティーブン・ブライスタインCEOは、「不正は例外的行為で、常習化していたわけではないと示すことが関係企業にとって極めて大事」と話す。
「日産もスバルも的確なタイミングでコミュニケーションを図り、透明性を確保すべきです。これまで把握していることや問題への必要な対処法、どのように顧客を守るかといったことを、被害の拡大の可能性を曖昧にしたり過小評価したりせず、説明しなければなりません」
不正が発覚しなかった競合企業にとって今の状況が有利なわけではないが、こうした危険性を前もって回避することが得策だろう。「日本の製造業全体のことを考え、これらの企業は予防的措置をとって、製造工程が厳正な管理下で行われていることを示すべきでしょう」と同氏。
その一方、2009年から10年にかけての世界的なリコールを乗り切ったトヨタは新たな道を歩み始めた。電気自動車(EV)を巡るテスラなどとの競争に加え、ダイソンも取り組むエコシステムの多様化に着手。車にとどまらない、より広いモビリティーのコンセプトに注力する。先週Campaignが取り上げたように、車を持つことに関心がないミレニアル世代をターゲットとした車のレンタルサービスも開始、新たな収益源の確保も狙う。
ブライスタイン氏はこれを、「現在提供している特定のプロダクトではなく、トヨタが世界に提供している価値に重点を置いた戦略」として評価する。ただしそれを機能させるためには、「社員が新たなポジショニングを真っ先に受け入れねばなりません」。
「消費者がブランディングの変化に気づく前に、社員は新しいビジネスの手法に適応しなければならないのです」
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)