David Blecken
2018年8月01日

保守的業界に「創造的破壊」をもたらす術

新たなサービス、「ディスラプション(創造的破壊)・コンサルティング」をスタートさせたTBWA HAKUHODO。日本企業をどのように変えようとしているのか。

堀江雄一郎氏
堀江雄一郎氏

この7月、TBWA HAKUHODOがディスラプション・コンサルティングを提供する部署を立ち上げた。日本の広告代理店では、コンサルティングサービスを担う最新のユニットだ。広告とは無縁のビジネスサービスは、電通やジョイントベンチャーのパートナーである博報堂が既にスタートさせている。

TBWA HAKUHODOの同部署は現在、不動産や消費財業界の企業をクライアントに持ち、マーケターや最高経営意思決定機関のメンバーなどと仕事に取り組む。チーフオペレーティングオフィサー(COO)の井木クリストファー啓介氏によれば、目標は「クライアント企業の全社員が理解でき、1つにまとまることができる変革へのビジョンを提示すること」。では、具体的にどのように活動し、ディスラプションに対して後ろ向きなことで知られる業界にどうコンセプトをセールスしていくのか。同部署を牽引する堀江雄一郎氏に尋ねた。

ディスラプション・コンサルティングというサービスは、これまでTBWA HAKUHODOが提供してきたサービスとどう違うのでしょう?

これまで我が社は実質的なコンサルティングサービスは行っていませんでした。この部署が提供するサービスの最も大きな特色は、広告制作とは無縁なことです。現在、日本企業の多くが変革の必要性を感じています。そうした企業を、広告以外の側面から支援していくのです。

企業にとって、広告を含まないソリューションをマッキンゼー&カンパニーのようなコンサルティング会社ではなく、御社に依頼するメリットは何でしょう?

コンサルティング専門の会社との最大の違いは、ディスラプションに重きを置いていることです。我々は企業が直面する様々な課題にソリューションを出すわけではありません。企業がいくつかの課題に窮し、現状を刷新する必要性を感じているときにそれをお手伝いするのです。

TBWAはこの部署にどれほどの投資をしましたか?

正確な数字は分かりません。実質的な投資は、社の内外から連れてきた人材でしょう。現在は9人体制ですが、ディスラプションがこの部署のベースであることをきちんと理解している人材を、将来的に加えていくつもりです。

実際に、ディスラプションとは何を意味するのですか?

日本の多くの企業は仕事を細分化し、そのための部署を設立することに長けています。また、従来型の仕事のやり方にも強みを持っている。だが今は変革の必要性に直面しつつも、それを迅速に実行できないのです。つまり、どうやって始めてよいのかが分からない。そこで我々が、スピーディーにそれを実現するのです。

日本企業は他国の企業に比べ、ディスラプションを難しいと考えていますか?

ディスラプションは一般企業にとって決して耳慣れた言葉ではありませんが、ディスカッションを通せばその概念をよく理解してくれます。ビジネス用語として広く使われるようになってはいますが、どのようにそれを実現したらいいのか具体策をなかなか見出せない。日本の企業は変革に臆する傾向があり、用心深くなりすぎるので、その方法論を提供してトライしてもらうことが我々の責務です。

企業が変革を実現する上で、最も大きな課題は何ですか?

変革の意思があっても、実際にそれを成し遂げるまでに時間がかかることです。皆が実行に移すまでに時間がかかり、多くの組織はそれが問題点だと気づき始めている。だからこそ、我々が具体策を提示するのです。皆を1つの部屋に集め、実行に移してもらうのです。

ディスラプション・コンサルティングをスタートさせた際、堀江さんは「継続的変革」の必要性について言及しました。しかし多くの日本企業のDNAには、変革という概念はありません。このことを鑑みると、御社の試みは現実的ではないのでは?

これまでワークショップに参加した人々の考え方を変えるだけでは、不十分だと考えています。企業のためにきちんとしたビジョンを掲げ、全ての意思決定に影響を及ぼす、ブランドとしての行動原理を打ち立てることが重要です。社員が特定の状況でどのように行動すべきかという規範を、各ブランドのために設定する。ただ変革を考えているだけでは実現しないので、どのように行動を変えるべきか具体的な指針作りに注力し、継続的変革に取り組んでいける術を示すのです。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)
 

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Campaign Japan

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