Byravee Iyer
2016年11月21日

単独インタビュー:ツイッターの生き残り策

人員削減を実施中のツイッターは、どのように社員の士気を高めているのだろうか。同社アジア太平洋担当バイスプレジデント、アリザ・ノックス氏に聞いた。

アリザ・ノックス氏
アリザ・ノックス氏

人員削減、主要幹部の退職、組織再編――。ここ数カ月のツイッターは、ドラマ続きだったといえるだろう。
ツイッターが終焉を迎えているとの声も聞かれるが、同社のアジア太平洋担当バイスプレジデントであるアリザ・ノックス氏は、ユーザー数、売上ともに順調に伸びていると強調する。
ノックス氏はCampaignの単独インタビューに応じ、今起きている変化が同社と、ツイッターを利用する広告主の双方にとって何を意味するのかを語った。

どのような状況でしょうか?

今年の初め、社内ではジャック・ドーシー(共同創業者兼CEO)の下でさまざまな見直しに着手しました。例えば、内部統制、プロダクトやサービスの簡素化、ユーザーへの周知方法などです。また、ツイッターのコアユーザー層の拡大にも取り組んでいます。

アジア太平洋地域がツイッターの成長戦略の要であり続けるということは、一貫して変わりません。この地域はユーザー数と売上の両面で、当社にとって最大かつ最も成長著しい市場となっています。第3四半期の業績は非常に好調で、ユーザー数、売上高ともに堅調な伸びを示しています。米国以外の売上は40%弱ですが、そのうちアジアの成長率は世界平均を上回り、年率21%となっています。全世界のユーザー市場の上位5位には、日本とインドネシア、そして最近はインドもランクインしました。また、中華圏、インド、韓国では売上が急速に拡大しています。オーストラリアは最も革新的な市場の一つで、同市場での売上の半分以上は既に動画形式。これは、ツイッター広告の未来を予感させる潮流といえるでしょう。

主要幹部の退職、人員削減、組織再編などが起きていますが……。

事業を運営する上で、改善できる点がいくつか見つかりました。例えば当社には、シリコンバレーの企業のように営業チームがいくつかあったのですが、複数の窓口があることでかえって広告会社や広告主に面倒をかけていたのです。そこで、営業チームの人数などを見直しました。

提携や事業開発にも手を入れています。的を絞った事業展開をすべき企業なのに、提携や事業開発を担当する人数が多くなり過ぎていたのです。そこでチームの人数を絞り、提携の部門はエンターテインメント、ニュース、スポーツ、クリエイターの四つの重点分野に集中することにしました。今、社内で起きているのは、このような変化です。

シンガポールでは何人が人員削減の対象になったのでしょうか?

全世界で9%の人員削減を行っており、これはどの地域もほぼ均等です。営業、マーケティング、事業開発などへの影響が大きいですね。シンガポールのオフィスには人員削減後も100人の社員がいて、採用も続けています。余分な役割の整理と業務の統合を目的とした、体制の再編を行ったのです。
広告主の反応はどうでしょうか?

パリー(※1)のチームメンバーは残っていますし、皆で協力し合って広告主との関係を維持しています。パリーやリシ(※1)のようなメンバーが、この過渡期を乗り越えるために力を合わせています。皆とてもプロ意識が高く、彼らのように退職を予定しているメンバーでさえ、支障なく移行できるよう非常に協力的で、険悪な雰囲気はありません。

※1 パーミンダ・シン氏(インド、東南アジア、中東、北アフリカのマネージングディレクター)
※2 リシ・ジャイトリー氏(アジア太平洋、中東、アフリカ北部のバイスプレジデント)

社内の士気はどうでしょうか?

悪くはありません。組織再編をすれば社員が影響を受けるのは必至です。もしこの状況下で士気が全然下がらなかったら、それはそれで悲しいことだと思います。それでも、ツイッターには繁栄し続ける企業文化があり、人生は続くのです。実際、今週いくつかの大型契約が成立しました。また、より良い世界を実現するためのコミュニティーサポート活動「ツイッター・フォー・グッド」にも注力しており、他にも社員の士気を向上させる取り組みを検討しています。確かに喪失感はありますが、売上がかつてないほど好調であることと、91%の仲間が今でも一緒に仕事を続けているということを忘れないよう社員に呼びかけています。

集中と選択の対象は何でしょうか?
最も注力しているのはライブ動画の配信で、これは従来通りです。ちょうどアジア太平洋地域で二つのライブストリーミングの契約締結に至ったばかりです。一つ目は11月に配信した2時間に及ぶ競馬「メルボルンカップ」で、既存の放送局による終日のデジタル放送の、半分近い視聴者数を集めました。もう一つは米国の男子プロバスケットボールリーグNBAです。ライブ配信は売上拡大の加速に貢献しており、唯一最大の注力分野です。

ユーザー数の拡大は、多くの企業にとって関心事ですが。

当社の成長スピードは、どの企業と比較するかによって、速いとも遅いともいえるでしょう。第3四半期、ツイッターの月間アクティブユーザー数(MAU)は平均3億1700万人で、第2四半期より400万人増、前年比で3%増です。また、1日にサービスを利用したユーザー数(DAU)の平均は、第2四半期に5%増えており、前年比では7%伸びています。視聴者数と利用頻度は、2四半期連続で上がっています。

もう一度強調しますが、私たちはプロダクトの簡素化に努め、四分野(エンターテインメント、ニュース、スポーツ、クリエイター)に焦点を絞っています。ユーザー数は増え続けるでしょう。ツイッターは動画にも進出しており、動画の利用は2倍以上に拡大しました。ツイッターは世界第3位の規模を誇る数のユーザーが利用しており、広告主はツイッターを通して8億人(非ログインユーザーを含む)にリーチできます。第3四半期は素晴らしい業績を収めましたし、今後の発展に向けてしっかりした地盤が固まったといえます。

広告主がツイッター広告費を減らしているとの報道もありますが、その真偽は?

あり得ません。売上が伸びていることが動かぬ証拠です。

(文:バイラヴィー・アイヤー 翻訳:鎌田文子 編集:田崎亮子)

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