最近、ある報道機関が、広告収入が失われることを懸念して、有償コンテンツの広告表示に難色を示した。
その報道機関は、記事全体を広告主が書いていた場合でも、そのことには軽くしか触れていなかった。また、広告記事に「オピニオン」と冠しており、これは報道ビジネスを傷つけることになるのではと懸念する報道機関もあった。
読者よりも広告主の心を失うことを心配する業界の、これは理解しやすい、しかし極めて近視眼的な抵抗である。だが、その場はうまくいったように見えても、実際には読者からの信頼と忠誠心を損なってしまっている。これは単に、昔から続く悪習のひとつにすぎないのだ。
考えてみてほしい。2022年に行われたギャラップ/ナイト財団の世論調査では、半数以上の人が、報道機関が読者、視聴者、リスナーの利益を一番に考えているとは思えないと回答しているのだ。果たしてこの結果を、広告主側はどう受け止めるべきなのだろうか?
なにもニュースを貶しているわけではない。そうではないのだ。誰もが、ニュースと広告が深い共生関係にあることは知っている。信頼できるニュースサイトに広告を掲載すれば、優良顧客にリーチできるだけでなく、ブランドの好感度に対する「ハロー効果」も享受することができる。マグナとディズニー・アドバタイジング・セールスの調査によると、信頼できる質の高いニュースサイトに広告が掲載されると、消費者のもっと知りたい、購入したいという意向が大きく高まることが確認されている。
ロイター・インスティテュートによれば、今年、米国のニュースに対する信頼度は2022年比で6%も上昇した。ロイターによれば、この変化は「党派的な険悪さ(CQ)がやや収まった」ためだと考えられている。しかし、そんな一過性のものではなく、これにはもっと深い理由がある。それは、多くの報道機関が、取材過程を説明し、誤りを認め、記者に関する情報をより多く公開し、報道が社会のあらゆる部分とより深く関われるよう、協調して努力しているからなのだ。
ニュースとオピニオン、そして広告を明確に分けること
私は、これらの努力を支援するために、トラスト・プロジェクトを設立し、視聴者の信頼構築に深くコミットするニュースサイトのコンソーシアムを率いている。数百に及ぶニュース・パートナーが、それぞれのサイトや放送で、8つの信頼指標を遵守している。彼らには透明性が必須であり、欺瞞的手法は認められない。
広告をニュースに紛れ込ませることはできない。広告を「ブランデッド・コンテンツ」や「スポンサード・コンテンツ」のようなあいまいなラベルで誤魔化すこともできない。なぜなら、そのような言葉は、一般消費者には無意味だからだ。
通常、ニュースにおける「スポンサード」コンテンツは、広告主のために書かれ、広告主によって承認されたものだ。対照的に、野球の試合の「スポンサー」は、球場に看板を掲げることはできても、試合に干渉したりはしない。エミー賞のような授賞式のスポンサーは、その華やかさと興奮から恩恵を得られはするが、脚本を書いたり受賞者を決定したりはしない。
当団体のニュース・パートナーは、その資金源についても明確にしている。他の用語と同様、彼らの「スポンサード」コンテンツは、ジャーナリストが誰の干渉も受けず、独自に制作したものだ。スポンサーは、食品、旅行、スポーツなど、消費者の関心を引きやすいニュース記事の隣に、自社のラベルを表示するためだけに広告料金を支払っている。
彼らは広告主の同意の元、ネイティブ広告や広告記事には「広告コンテンツ」のラベルを貼る。あくまで「広告コンテンツ」だ。「ブランデッド」や「スポンサード」、あるいは「ネイティブ」といった言葉の陰に隠すことはしない。それらの用語は真実を隠蔽するために作られたものであり、一般の人々もそのことを知っているからだ。
私たちの調査では、人々はニュースの背後にある「制作意図」を知りたいと繰り返し語っている。もちろん、そこには販売目的も含まれる。また、「スポンサード・コンテンツ」の本当の意味を知ったら、騙されたと感じ、可能な限り避けたいと言う人もいた。
その一方、透明性は信頼を高めるだけではなく、ニュース自体への関心を高め、対価を支払う意欲も高めることがわかっている。ある意味、これは当然のことだろう。8つの信頼指標は、読者中心に設計された調査結果に基づいており、読者・視聴者のニーズと欲求をジャーナリズムの基本に融合するためのものだ。ニュースサイトの信頼が高まれば、当然、そのサイトに掲出される広告の信頼も高まる。
世界のニュース業界の多くが、変化を受け入れるために立ち上がっている。真に大衆に奉仕し、信頼を得るために、より透明性を高めようとしている。しかし、それは彼らだけでできることではない。ブランドも、ニュースの誠実さを支持しなければならない。そして、それと同じくらい重要なのが、ニュースとともに流れる広告の誠実さだ。
消費者は、誠実な報道記事の隣に広告が掲載されることで、そのブランドをより信頼するし、アクションを起こす可能性も高くなる。しかし、信頼が危機に瀕している今、ブランドが成功を収めるためには、自ら信頼をアピールするしかない。
つまり、「ブランデッド・コンテンツ」のような紛らわしいラベルを貼って、記事が宣伝コピーであることを曖昧にするのはもうやめるべきだということだ。コンテンツを「スポンサー」するときには、ニュース報道の公正中立性という威光を活用しよう。もし、宣伝コピーを記事的に掲載したいなら、それが何であるかを明確に表示すべきだ。そして、そのラベルは「広告コンテンツ」であるべきなのだ。
サリー・ルールマンは、ピーボディ賞受賞ジャーナリストであり、トラスト・プロジェクトの創設者兼CEO。