Charlotte Rawlings
2024年7月10日

広告業界は短尺コンテンツで勝負する必要があるのか?

カンヌライオンズのFilm部門で審査委員長を務めたトア・ミレン氏は会期中に、短尺動画の活用を広告業界に訴えていた。

広告業界は短尺コンテンツで勝負する必要があるのか?

* 自動翻訳した記事に、編集を加えています。

カンヌライオンズのFilm部門で審査委員長を務めたアップル(Apple)マーケティングコミュニケーション担当バイスプレジデントのトア・ミレン氏は、広告業界は短尺動画をもっと上手に活用する必要があると語った。

その理由は「短尺動画は簡潔でスピード感があるから」と同氏。この部門でグランプリを獲得したのは、オレンジ(Orange)とシドニー・オペラハウス(Sydney Opera House)で、後者は4分半ほどだったが、これは異例のケース。特にブランドがエンドレスなエンターテインメントと常に競争しているオンラインで、人々は長い広告を見る時間がないと述べた。

Film部門に出品された短尺コンテンツは「単に並外れた作品ではなかった」。そしてインパクトのある作品を作りたいのであれば、簡潔で視聴者をすぐに引き付ける必要があるという。

 Campaignが会期中に飲料水ブランド「リキッド・デス(Liquid Death)」のマーケティング担当シニアバイスプレジデントのダン・マーフィー氏とクリエイティブ担当バイスプレジデントのアンディ・ピアソン氏にも取材を行ったところ、ブランドはライバルとだけでなくエンターテインメントとも競争しなければならないと示唆した。

両氏は、マーケティングを消費者にとっての娯楽として扱うことが重要だと強調する。長尺のコンテンツの方が、創造性と娯楽性を高める余地は大きいのかもしれない。

そう考えると、広告業界は短尺広告で勝負する必要があるのだろうか?

ヴィッキー・マグワイア氏
ハヴァス・ロンドン(Havas London) 最高クリエイティブ責任者

目に熱い針を刺したいと思うほど耽美なコンテンツを、審査員室で何時間も見続けてきた。しかし10分以上の長尺映画を見て、終わってほしくないと思ったこともある。重要なのは、作品にとってふさわしいかどうかだ。クリエイターの皆さんには自問していただきたい。デオドラントを扱ったこの3分間の作品は、自己満足のためのディレクターズ・カットなのか、それとも、貴社が苦労して稼いだお金から数百ポンドを払う価値があるものなのか。尺は長いほど良いとは限らないが、短ければ良いというものでもない。1秒1秒、それぞれのショットやセリフ、予期せぬ展開、ジョーク、どんなものにも理由がなくてはならない。30分だろうが30秒だろうが、つまらないものは無視されてしまう。

マーティン・ローズ氏
マザー・ロンドン(Mother London) エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター

どちらの指摘も正しいが、優先されるのは尺の長さよりもコンテンツの娯楽性だ。例として同じブランドの動画を比べてみると、ウーバー(Uber)が『Trains-now on Uber』を30秒の短尺動画にしたのは、ストーリーがその長さに見合っていたからだ。逆に『Uber One』は、ロバート・デ・ニーロとエイサ・バターフィールドの友情を十分に表現するためは長い尺が必要で、視聴者の注意を3分以上引き付けた。

広告の創造性を長さだけで判断するのは短絡的だ。『Trains』が短いという理由だけでゴールドを受賞したり、『Uber One』が長さのせいで減点されるとは考えたくない……。私は審査員に、コンテンツが全体を通して魅力的か、長さは見合っているかと問うてほしい。

すべてのコンテンツは最初の3秒以内に視聴者の興味を引かなければならないとか、Z世代は集中力が続かないという話はもう聞き飽きた。私たちのアテンションスパン(集中力を持続できる時間)が短くなっているといわれる一方で、長尺動画の平均視聴時間は長くなっている。人間のエンゲージメントは常にコンテンツの質と娯楽性にかかっており、長さは関係ない。必要なのは、より短い広告ではなく、より質の高い広告なのだ。

チャカ・ソバニ氏
DDBワールドワイド(DDB Worldwide) プレジデント兼グローバル最高クリエイティブ責任者

長尺であれ短尺であれ、素晴らしい動画を制作するのは難しいことだと思う。

長さがあるからといって、良いストーリーがうまく語られるとは限らない。重要なのは、長さとプラットフォームに合わせて制作すること。視聴される場所や方法は異なる。万人向けに作ろうとすると、動画の質やストーリーテリング、インパクトが損なわれる可能性がある。

短い尺に合わせて制作したのでなく、長尺作品を短くしただけの短尺動画は、質が大幅に低下しかねない。だからといって、短い時間にどれだけ詰め込もうとしているのかについても、真剣に考える必要がある。情感を込め、複数のメッセージも盛り込まなくてはならないと考える必要はない。簡潔さを保つべきだ。

リチャード・ウォーレン氏
ネーションワイド(Nationwide) ブランド・マーケティング・広報担当ディレクター

トア・ミレン氏が言うように、もし短尺動画が単に「60秒未満」であることを指すならば、広告業界はすでにこの分野で優位に立っている。もし「プラットフォームにネイティブな動画」を意味するのであれば、広告業界がこの分野のレベルを向上させるだろう。私の経験では、広告業界は制約に直面したときほどクリエイティブになる。プラットフォームに合わせた短尺動画へと需要が大きくシフトしており、広告クリエイティブの奇才たちはここでも才能を発揮しようと、何が必要かを考えて全力を尽くすに違いない。それが彼らのキャリアを決定づけることとなるだろう。

サマネ・ザマニ氏
アイリス(Iris) 戦略ディレクター

私たちは短尺動画に移行する必要性を何年も前から説いてきたので、未だにこの質問が出ること自体に不安を覚える。その方法について、広告業界やブランドがもっと具体的に示すべき時期に来ている。興味を引く短尺コンテンツの制作に関しては、人々はブランドよりも早く動いており、情報を広めたりストーリーを伝えたりする方法を変えている。

これは、同じ量の情報をより短い時間で伝えるという意味ではない。広告が何を正確に伝える必要があるのかしっかり見極め、各チャネルの視聴者が求める内容を厳選して具体的に実行するということなのだ。

 そこで課題となるのが、あなたのブランドにとって短尺動画の世界における優れたストーリーテリングとはどのようなものかということだ。ブランドが何者で何を伝えようとしているのかを、最も深くシンプルな意味で理解しているだろうか? 短尺に対応しながら一貫性を保つために、何を修正し、何に柔軟に対応するつもりなのか?

 これは、多くのクライアントにとって喫緊の課題だ。当社のウェビナー『Cutdown killers』でも今後、いかにブランドが放送からソーシャルに転換していくかを取り上げていく。

シェリー・スモラー氏
ドロガ5(Droga5) 最高クリエイティブ責任者

時間の長さについての議論は忘れよう。世界が猛スピードで動いていることは、皆が知っている。アテンションスパンが短くなり、視聴者の心をつかむには数秒しかない。動画が6秒と短かろうと1分の傑作であろうと関係ない。分単位ではなく、関心が高まる瞬間について考える必要がある。

本当の問題は、どのようにすれば人々の関心を引き付けて離さないか、ということだ。短尺であれ長尺であれ、一枚の画像であれ動画であれ、人々をその場に引き止める必要がある。時間はアテンション(注目度)の関数だ。

そして、10代の若者がゲーム『フォートナイト(Fortnite)』を2週間もプレイするのを見たことがある人ならばご存知のように、アテンションスパンは最も交換の余地がある時間枠だ。インパクトがあれば、想定していたよりも長く持続する可能性がある。

リンジー・アトキン氏
4クリエイティブ(4Creative) エグゼクティブ・クリエイティブ・ディレクター

短尺動画では、要点をつかむことが求められる。

私たちはしばしば、いろいろ欲張りすぎたり、一つの目的に絞り込んだ提案を選べなかったり、内容を盛り込もうとしすぎるマーケターを非難して、30秒スポットCMの終焉を嘆くことがあるが、私はむしろその逆が真実だと思う。伝えたい内容を見つけることができなければ、短い尺では不十分だ。そしてそれでも、どうにかこうにか短尺動画を作り上げてしまう。

優れたインサイトや鋭いアイデア、あるいは長期的な視点が欠けていたとしても、素晴らしい音楽を使って編集技術を駆使すれば、何らかの雰囲気を伝えて凌ぐことはできる。うまくいけば、私たちが最近ドキュメンタリーと呼ぶようになったもの(ドキュメンタリーでないことは周知の事実だが)でさえも、なんとかなる。

しかし、短尺動画ではそれができない。純粋に興味深いこと、驚くこと、楽しいこと、そして売りたいものがなければ成り立たない。正直なところ、これらがなければ一体何の意味があるというのだろうか?

 

提供:
Campaign UK

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