両社ともに、慎重な次期業績予想を示した。また電通は、昨年の不祥事との関連性について言及を避けた。
2016年12月期連結決算で、835億円(前年同一期間比0.5%増)の当期利益(親会社の所有者に帰属)を計上した電通。2017年12月期の連結業績予想は86.6億円(同3.7%増)だが、労働環境改革への投資を行うため、前年を下回る業績を見込む可能性にも触れている。社員の過労自殺を受けて業務を平準化するため、同社は、配置換えと中途採用の実施を昨年末に約束している。
2016年12月期、同社の収益は8,383億円(同2.4%増)、売上総利益7,890億円(同3.5%増)と、増収増益を達成した。
さらに、国内子会社の力強い業績に支えられ、国内事業の売上総利益は3,632億円(同4.3%増)となった。
電通の海外本社、電通イージス・ネットワーク社によると、同社の海外事業の売上総利益のオーガニック成長率は5.7%増。さらに、デジタル事業の売上利益が、従来のマーケティング事業の売上利益を初めて超えたと発表した。
ヨーロッパ、中東およびアフリカ(EMEA)地域の売上総利益は、2桁成長を遂げたスペイン、イタリア、ロシア、1桁ではあるが高成長したドイツ、フランスでの好調さに支えられ、6.9%増となった。
電通の米州地域の売上総利益は3.1%増。特にカナダが目覚しく躍進した他、南米ではメキシコ、コロンビア、アルゼンチンの業績が2桁成長となった。しかし同社の報告書によると、ブラジル市場は不安定な経済的・政治的要因から「引き続き厳しい状況が続いている」としている。
1,000件近くに及ぶデジタル広告費の不適切な処理が電通の内部監査で発覚したにも関わらず、デジタル領域の構成比は国内19.7%、海外52.3%と、売上総利益に大きく貢献した。
決算発表において同社は、デジタル広告費に関する不祥事や、石井直氏の代表取締役社長執行役員の辞任については触れていない。石井氏の後任である山本敏博社長執行役員は、中期経営計画「Dentsu 2017 and Beyond」の進捗状況について、「国内事業が堅調に推移する中、当社グループの海外事業は、競合メガグループを大きくアウトパフォームするスピードで力強く成長」したと報告した。
山本社長はデジタル事業について、「これまでにない独創的な解決策を顧客に提供できると確信しています。今後も、グループ一体となって、データを中核においた提案力・実施力を強化してまいります」と語った。また「海外事業のデジタル比率は、既に50%を超えています」とも説明している。
山本社長はさらに、「新たな働き方を確立する先進的な存在へと進化させる」と、次期に向けた決意を表明した。
アサツーディ・ケイの2017年12月期の連結決算では、売上高は3,526億円(前年同期比0.2%増)、売上総利益は511億(同4.8%増)となった。しかしながら、当期純利益は23億(同55.7%減)という結果に。同社はこの理由を、事業整理損などによるものとしている。
さらに、海外事業の減収減益の要因は「為替の影響ならびに中国圏子会社の構造改革が継続していること」にあると説明した。ADKグループの海外事業が当期の売上高に占める割合は8.3%。
アサツーディ・ケイの次期の見通しは、国内市場の消費懸念、米国とヨーロッパでの不安な政治要因から、慎重な見通しとなった。次期の純利益は55億円と予想。併せて、「業務形態が複雑化」し、「競争が激化」しているコンテンツビジネスに挑戦していることにも触れている。
博報堂の2016年通期決算発表は5月を予定している。
(文:エミリー・タン、デイビッド・ブレッケン 翻訳:高野みどり 編集:田崎亮子)