海外の主要市場における長期的不振により、電通は2019年度通期業績予想を再び下方修正した。損失を埋めるべく、大幅な人員削減も実施する。
収益の連結業績予想(2019年1月1日より12月31日まで)は8月に公表した予想よりもさらに1.9%減。調整後営業利益も5.2%減となった。この結果、親会社所有者に帰属する当期利益は358億円から62億円へと大幅に落ち込んだ。
先月には、「中国と豪州での業績回復の兆しが見えない」と発表。海外事業を担う電通イージス・ネットワーク(DAN)は今年になって経営陣の大幅な改革を実施しており、アジア太平洋地域と英国では地域や海外事業を統括する主要な幹部が次々と社外に去った。
16日に開催された取締役会では、豪州、中国、シンガポール(地域統括オフィスを含む)、英国(海外事業統括オフィスを含む)、フランス、ドイツ、ブラジルの7市場で「ここ数四半期連続で不振」(同社ニュースリリース)が続いているため、構造改革を実施することが決定された。
これには対象市場全体の約11%(海外事業を支える全従業員の約3%に相当)の人員削減や、不動産の適正化、他の関連施策が含まれる。
構造改革全体の費用としては1億7900万ポンド(約248億円)を見込み、その大半を2019年度に計上する。その効果として、年間ベースで1億ポンド(約138億円)以上の人件費関連コスト削減が見込まれるという。
また、海外事業全体をクリエイティブ、CRM、メディアの3つの事業ユニットで構成するシンプルな組織に変更する。
電通は「複数の戦略的な施策を導入し、2020年度とそれ以降における継続的な成長を目指す」としているが、株主たちは将来的なコスト削減や効率性を案じ、同社の株価はこの日5%下落した。
国内事業に関しては想定の範囲内で推移しており、8月7日に公表した2019年度の業績予想に変更はないとしている。
(文:ロバート・サワツキー 翻訳・編集:水野龍哉)