電通は、社員の心得「鬼十則」の中にある「取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは…」が問題視されたことを受け、社員手帳への掲載を取りやめると発表した。
昨年末に電通の女性社員が過労自殺して以降、「鬼十則」への批判が高まっていた。「鬼十則」は1951年に当時の社長である故吉田秀雄氏が定めたもので、社員が最大限の力を発揮して仕事に打ち込むよう、鼓舞することを意図したものだった。
「鬼十則」の多くは、1950年代と同様に今の時代にも当てはまる、妥当な内容といえる。仕事は受け身であってはならない、小さな仕事ではなく大きな仕事に取り組め、自らに常に目標を課せ、同僚に良い例を示せ、摩擦を恐れるなといった趣旨の、社員へのメッセージが盛り込まれたものだ。
電通では、ワーク・ライフ・バランスを大切にした職場環境を実現すべく、これまでの慣行を見直している最中だ。同社は既に、極端な長時間労働を防止する対策を実施している。他にも、マネジメント職の評価に部下からの評価を取り入れる「360度評価」を導入するほか、全ての局での有給休暇取得率50%以上の達成を目指す。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:高野みどり 編集:田崎亮子)