初のグローバルキャンペーンをスタートさせたティンダー。その特徴は、性の多様化に合わせた「様々なタイプの出会いが見つかる」(同社)ことだ。
「It Starts with A Swipe(出会いはスワイプから始まる)」と題された今回のキャンペーンはZ世代がターゲット。あらゆるアイデンティティーを許容するZ世代が適応できるよう、対象は従来型の男女からジェンダーフルイド(複数の性を行き来するセクシュアリティー)まで、目的も真剣な交際からカジュアルな出会いまでと幅広く設定。
「マッチングアプリとしてティンダーはすでに高い評価を得ている。そのポジショニングを生かし、人の多様性と様々な出会いをユーザーに認識してもらうことが狙い」と同社グローバルCEOのメリッサ・ホブリー氏。
同氏によれば、長期にわたる真剣な交際を求めているティンダーのユーザーは全体の42%以上。LGBTQの人々の間ではそれが7割に及ぶという。
「一番少ない層は、短期的な関係を求める人たち。カジュアルなセックスを求める時代は終わったと言いたいのですが、そういう関係を求める人にもチャンスは提供する。あらゆる付き合い方、可能性の提供に注力しています」
キャンペーンでは美しいアートワークとともに、BIPOC(黒人、先住民、有色人種)やLGBTQIA+といった多様なカップルの関係性を描く。彼ら、彼女らのそうした日常の中で、互いの友人や親に出会うといった節目になるシーンの描写も。登場人物には俳優と、そうではない実際のカップルを起用。
配信はOOH(屋外広告)でも展開し、ニューヨークやロサンゼルス、ベルリン、パリ、ロンドン、メルボルン、シドニーなどの街頭を彩る。インフルエンサーとも協働し、ソーシャルメディアやポッドキャストでも展開を予定。
制作を担ったのはロサンゼルスとロンドンに拠点を置くプロダクション「ビスケット」。同社に所属するディレクターは男女が50%ずつで、完全にジェンダー平等の会社だ。
ティンダーはこれまで、異人種間の結婚やLGBTQIA+の出会いを促進してきた。それゆえ、「あらゆる愛情の形を示すことはティンダーの責務」とホブリー氏。
「特別な人とのデートを実現することは容易ではない。だからこそ、このキャンペーンではそれをお伽噺的に描きたかった。非現実的で美しく、意義あるものとして」
アイデアのベースになったのは、実際のティンダーのユーザーやZ世代のエピソード。例えばキャンペーンのキャッチフレーズは、ホブリー氏の友人が言った「1回のスワイプが人生を変えた」という言葉がベースになった。
TikTok(ティックトック)のFYP(おすすめページ)を一緒に楽しめるような人と知り合いたい −− そうホブリー氏に訴えたZ世代の言葉もコピーに反映された。
星占いによる相性診断や結婚の適性診断も提供するティンダー。18歳の若者に最もダウンロードされているアプリで、中心的ユーザー層は18〜25歳。LGBTQIA+のユーザーも急増しており、18〜25歳でLGBTQIA+を自認するユーザーは過去2年間で2倍以上に増えている。
(文:サブリナ・サンチェス 翻訳・編集:水野龍哉)