Daniel Farey-Jones
2019年3月28日

LGBTプライド月間を前に、ブランドへのアドバイス

プライド月間はお祭りというより政治的な場だと、アドバタイジング・ウィーク・ヨーロッパでオブザーバーたちが指摘した。

LGBTプライド月間を前に、ブランドへのアドバイス

6月は、LGBT+(性的マイノリティー)の人権を訴える「プライド月間」だ。これにブランドはどのようなアプローチで取り組むべきか、アドバタイジング・ウィーク・ヨーロッパで4人のパネリストがアドバイスした。

パネリストの代表を務めたのは、カーマラマ(Karmarama)のプランニングディレクター、マシュー・ワクスマン氏。その他の3名は、LGBT+の平等を訴える英団体「ストーンウォール(Stonewall)」の理事でアビバ(Aviva、保険会社)の元グローバル・インクルージョン・ディレクターのジャン・グッディング氏、LGBT+向けメディア『ゲイ・タイムズ』の新CEOに就任したタグ・ワーナー氏、それに英国陸軍LGBT+フォーラムの代表を務めるジェイミー・キャラハー大尉だ。

まず議論の方向性を示したのは、グッディング氏。プライドは「インクルーシブ(受容的)なブランドであることを従業員や顧客に伝える、非常に大切な機会」であり、また「十分な準備をせずに取り組むと混乱を生み出しかねない、危険をはらんだ政治的な場でもある」と語った。

プライド・ロンドンのパレードは、毎年推定で100万人が応援や見物などに集まる特に大きな催しで、グッディング氏によれば、英国で開催される37のパレードの中でもひときわ大きなもの。これにブランドが魅力を感じるのも、当然のことだ。

だがグッディング氏は、こう注意を呼びかける。「プライド・ロンドンは単なる大きなお祭りのように見えるかもしれませんが、実は今も、本当に政治的な場なのです。プライドが始まった当初は、完全に政治的なイベントでした。道路脇で応援する人よりも、侮蔑の言葉を投げつける人たちの方がずっと多かったのです」

「世界ではまだ70以上の国で同性愛が違法であり、5つの国で死刑に相当する罪となっています。プライド・ロンドンは今も、抗議のパレードなのです」

ワーナー氏は、ゲイ・タイムズやプライドに関わりたいと考えるブランドには「不本意な質問の数々」をぶつけられる覚悟が必要だと話す。「楽しく大騒ぎするだけのイベントではないのです」

ブランドが、プライドをお祭りや政治的なイベントとしてではなく、まず商機とみなすのは無理もないが、なぜ関わりたいのかよく考えてほしいとワーナー氏は言う。

ワーナー氏はこう語る。「プライドに参加するブランドに、まず『なぜ参加したのですか』と聞けば、たいていは『商品にレインボーマークをつけたので、それを売りたいのです』と答えます。しかし忘れないでほしいのは、LGBTコミュニティーはプライドのためだけの存在ではないこと。夏になると現れて冬になると消えるといったものではありません」

ワクスマン氏によれば、ロンドン在住のLGBT+当事者たちと、ロンドン以外の地域でのプライド参加者たちとでは、ブランドに対する姿勢が異なることがあるとか。ワーナー氏も同意して、こう語る。ブランドの中には自社ロゴにプライドのレインボーマークをつけるのを敬遠するところもあるが、ロンドン以外の地域ではこのような行動が、より歓迎される傾向があったそうだ。

「自分たちのロゴにレインボーフラッグがあしらわれるのは、とても素晴らしいことだったと言ってくれたのです」とワーナー氏。「異なる視点があることを、理解することが重要ですね」

グッディング氏はアビバ時代、スポンサーシップに関する決定を社内のLGBT+グループに任せた。その結果アビバは、プライド・ロンドンへのスポンサーとしての招待を辞退することになった。これはアビバ・ブランドを、同社最大のオフィスがあるヨークとブリストルで開かれるプライドイベントで強調したかったためだとか。

議論は、ブランドがプライド関連のマーケティングをすることの是非へと移り、パネリストたちはソノス(家庭用オーディオブランド)とホリデイ・インの例を挙げた。

ソノスの話を出したのはワーナー氏。同社は事業のキャンペーン案について、ゲイ・タイムズに支援を依頼していたからだ。

ワーナー氏たちは、国によってはLGBT+の人々が抑圧に直面し、それに対抗する手段として音楽が使われるというアイデアを思いついた。そして「性的マイノリティーらしさをあからさまに打ち出している」ため圧力を受けていた、ロシアのあるバンドのストーリーを伝える上でソノスの支援を活用し、プライド・ロンドンとは別期間の催しで、このストーリーを広く知らしめることができたそうだ。

ホリデイ・インはプライド期間中、社名をホリデイ・アウトにするという「遊び心のある」アイデアを採用。「ブランドが運動の趣旨をきちんと理解しているならば、LGBTへの支援を表明するこういったアイデアはとても素晴らしい」とグッディング氏は言う。

だがグッディング氏は、「プライドイベントの日だけハンバーガーをレインボーの紙で包んだある有名ブランド」には異議を唱えた。なぜなら「そのブランドは、従業員やサプライチェーンに対する姿勢といった点で、運動を理解しているといえなかったから」だという。

グッディング氏は、去年ストーンウォールが「陥ったトラブル」にも触れた。ストーンウォールはプライマーク(Primark)と組んで、いつものTシャツとは異なった、プライド関連の衣類を作ろうとしたところ、反対に遭った。プライマークが、LGBT+の権利がないがしろにされてきたトルコで衣類を生産していたからだ。

「誰でも間違うことはあります。でも過ちは素直に認め、よく考えて、繰り返さないことが大事なのです」とグッディング氏は言う。

キャラハー氏は、顔にレインボー色を塗るクリームの容器にイギリス陸軍の名前をつけ、プライドイベントで使ってもらうことにした話に触れた。軍が顔に塗る迷彩柄ペイントに着想を得たこのアイデアは、カーマラマが考えた。「迷彩柄は通常、溶け込むためのもの。でもこれは、抜きんでるためのもの」というメッセージを記し、LGBT+を受け入れる姿勢を示した。

(文:ダニエル・ファレイ=ジョーンズ 編集:田崎亮子)

提供:
Campaign UK

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