これは、Campaignで取り上げた2016年の日本の作品の中から、最も好感を持ったものを紹介したランキングである。最高だった作品、あるいは最も効果的だった作品を順位付けしたものではない。これらの作品を選んだ理由はさまざまだが、独自性や、ブランドと消費者の双方にとっての意義、全体的なエンゲージメントやエンターテインメント性などを重視した。
最も心を動かされたのは、大手ブランドの作品ではなく、移植医療を啓発・普及するチャリティー活動「グリーンリボンキャンペーン」の作品だ。電通が手掛けたこのプロジェクトでは、「移植」を必要とするおもちゃ(例えば足の悪いおもちゃ)と、「ドナー」となるおもちゃの提供を呼び掛けた。私たちの多くは臓器移植を話題にすることに抵抗を覚える。それを身近なものとして話し合えるようにするにはどうしたらいいかという難題に、簡潔な答えを示した見事な取り組みだった。
2.ビームス「TOKYO CULTURE STORY 今夜はブギー・バック(smooth rap)」
ビームスの40周年記念ショートフィルムには、インスピレーションと楽しさが溢れると同時に、ポップカルチャーの形成にブランドがいかに大きな役割を果たすかが鮮やかに表現されていた。ブランドが広告でなく「コンテンツ」を制作する際には、このような作品づくりにもっと力を入れてもらいたい。
自動車会社のマーケティングは、自分たちの会社や自社製品の車だけにスポットライトを当てる必要はない。現場仕事に携わる職人の間で広く使われている日産自動車の商用バン「キャラバン」の販促キャンペーンには、現場のプロフェッショナルに対する理解と賛辞が表現されており、傑出した作品だった。また、単発のコンテンツにとどまることなく、我こそはという職人たちに向けて、取材とウェブサイト掲載への応募を呼び掛けている点も良い。
4.ハーレーダビッドソン「GO LIVE GO RIDE:Weekend Ride ― 試乗を超えた最高の体験を」
オートバイの通常の「試乗」を圧倒的にしのぐ、気の利いたキャンペーンだった。若い世代を顧客層に呼び入れたいハーレーダビッドソンは、週末の2日間でプレミアムな試乗体験を提供した。同社はツーリングプランを作るサポートも行い、旅の様子をオリジナル動画コンテンツとしてプロモーションサイトに掲載。殻を破って「反逆者」になることを若いサラリーマンに呼び掛けており、ポジショニングがうまい。ブランドのルーツに忠実であり続けながら、新しい風を吹き込んでいる。
5.日清食品「侍ドローン猫アイドル神業ピタゴラ閲覧注意爆速すぎる女子高生 」
日清食品は長年にわたり、どこにでもあるインスタントラーメンのような商品を楽しく刺激的なものに仕立て上げており、その腕前は素晴らしい。元祖「チキンラーメン」の発売58周年を記念したこの動画には、最近の日本の広告にありがちな「バズる」要素が盛り沢山に詰め込まれているが、その一方で、優れた商品は流行に流されることなく長く愛され続けるのだと改めて実感させられた。何より、見ていて面白い動画だった。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:鎌田文子 編集:田崎亮子)