プライスウォーターハウスクーパース(PwC)は年次調査「グローバル エンタテイメント&メディア アウトルック 2018-2022」を発表した。調査は広範に及ぶが、その中でも日本の視点から、知っておくべきものを以下に抽出した。
- 世界第4位のインターネット広告市場である日本は、今後4年間で4.6%成長し、2022年には152億米ドル(約1.68兆円)の規模となる見込み。同時期に米国では1274億米ドル(約14.1兆円)になると予測されている。インターネット広告の収入は2019年に、テレビCMの収入を追い抜くとみられる。
- オンライン広告の最も大きな収入源はモバイルで、昨年は全体の46%を占めていた。2022年には85億米ドル(約9398億円)となる見込み。日本が世界有数のモバイルインターネット加入者数を誇る市場であることを考慮すれば、当然のことともいえる。
- 特に成長が著しいのはモバイル動画広告で、2022年末には9.25億米ドル(約1023億円)に達する見込み。
- デジタル広告収入のうち、27.1%を占めるのがデスクトップ広告で、次いで検索連動型広告(15.2%)が続く。PwCは、日本のインターネットユーザーの約3分の1(2016年)が広告ブロックを利用したとする調査結果(ジャストシステム社)に触れ、広告ブロックの利用は今後増える可能性があると指摘する。米国など複数の国のユーザーと比較すると、日本のユーザーは全体的に、コンテンツを見るために広告動画を試聴することを許容する傾向にある。
- インターネット広告収入が2022年までに152億米ドル(約1.68兆円)に達するのに対し、テレビ広告は145億米ドル(約1.60兆円)となる見込み。それでも日本のテレビ広告の市場規模は、中国を抑えて世界第2位となる。
- 視聴率で引き続き首位の座を守ったのは日本テレビで、2017年の全日平均視聴率は8.2%、売上の68.2%は広告収入によるものだった。テレビ朝日、TBS、フジテレビ、テレビ東京がこれに続く。
- PwCは日本のテレビ産業を、人々が多様な方法でコンテンツを視聴している点で「きわめて進歩的」と評価。2022年までにインターネットテレビの広告は27.7%成長して10億米ドル(約1105億円)の規模となり、テレビ広告全体の7%を占める見通し。
- BtoB広告は見過ごされがちだが、収入は昨年1.3%増と過去5年間で最高の伸び率だった。今後もこのペースで、2022年まで成長していくと見込まれる。一方で、低い価格がこのセクターを押し下げる要因であるともPwCは指摘する。
- eスポーツを含むゲーム産業は、2022年までに171億米ドル(約1.89兆円)規模に達する見込み。ゲーム内広告は2022年までに4.6億米ドル(約509億円)となり、米国、中国に次ぐ世界第3位の市場規模となると予測されている。
- 賞金制のゲーム大会が最近合法化されたことから、eスポーツは将来有望だが、中国、米国、韓国ではまだ全体の1割にも満たない市場規模だ。このセクターの成長に伴い、ブランドがeスポーツ関連の動きを活発化させることが期待される。
- PwCは日本を「消費者向けVR(仮想現実)の最前線」と位置付け、2022年までに1930万台ものヘッドセットが流通するだろうと予測。それでも広告収入を支えるには少なすぎる数字で、コンテンツ開発者は収益を出すのに苦労するだろう。しかし開発者たちはBtoB向けのVRアプリ開発にチャンスを見出しており、多くのブランドはこの領域での展開に注力すると見込まれる。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:田崎亮子)