Staff Reporters
2020年11月27日

「40 Under 40 2020」:APACの明日を担う、若き日本の才能

アジア太平洋地域(APAC)のマーケティング及びメディア業界で目覚ましい活躍をした若手の逸材を、Campaign Asia-pacificが毎年選出する「40 Under 40」(40歳以下の40人)。今年は日本から2人が選ばれた。

「40 Under 40 2020」:APACの明日を担う、若き日本の才能

今年で8回目となる40 Under 40には、200人以上の応募が寄せられた。例年のことながら、集まったのはそれぞれ素晴らしい実績を誇るプロフェッショナルたち。選考は困難を極め、Campaign Asia-Pacificのシニアエディターたちは2度にわたる厳正な審査を行った。

選考基準となったのは、事業における成果の度合いと業界の進化を促す「熱度」。特に過去1年の実績と、肩書の枠を超えた業界全体への影響力に着目した。

今年選ばれた40人は、様々な点で実に多様だ。ジェンダー、ルーツ、勤務地、専門分野、業績、過去の軌跡……。しかしながら、全員に共通するのは「卓越性」だ。彼らをご紹介いただいた各企業の方々に、改めて厚く御礼を申し上げたい。

それでは、日本から選出された2人をご紹介しよう。

リラ・アントン

(ネットフリックス・ジャパン クリエイティブマーケティングマネージャー)

リラ・アントン氏


アフリカ系米国人の母親とユダヤ系米国人の父親を持ち、日本で生まれ育ったアントン氏。両親は1975年にニューヨークから日本に移住した。

生まれながらにして東西の文化を享受してきた同氏は、その稀有な個性を仕事にも反映させてきた。日米両国で学校生活を送った後は、日本で多文化教育に従事。2007年からは米国でキャリアを磨いた。

2012年にはTBWAメディアアーツ・ラボでアップルの新製品キャンペーン担当となり、そのグローバルプロジェクトマネージャーに。同氏が中心的役割を果たしたキャンペーンはローカルやマイノリティーの視点を導入、大きな反響を呼び、誉れ高いADCOLORの「ライジングスター賞」を受賞した。その後はアップルのヘッドホンブランド「ビーツバイドレ」のプロジェクトに携わり、初の日本向けキャンペーンを担当。伸び悩んでいた同ブランドの売上高を前年比4倍にする快挙を成し遂げた。

2018年、ネットフリックス・ロサンゼルスに転職。コミュニケーションや制作、マーケティング部署などと協働、クリエイティブの一連の流れに携わりながらアートワークを担当。ネットフリックス・オリジナル作品のティーザー広告や予告編などを手がけた。その後、東京に異動。当時、日本の同社にはまだクリエイティブマーケティング機能がなく、アントン氏はゼロからの立ち上げに1人で奮闘。わずか2年でその生産性は5倍になり、日本向けドラマシリーズはユーチューブ上で150万人の視聴者を獲得した。クリエイティブマーケティング効果で、同社は日本市場でトップのライブ配信サービス企業となった。

コロナ禍には太平洋を跨いでリモートで映画を制作。さらにはネットフリックス社内の多様性・包摂性に関する議論を促進したり、関連企業幹部に業務の進言をしたり。積極性と創造力、そしてエネルギーがアントン氏の大きな強みだ。

細田高広

TBWA HAKUHODO  エグゼクティブクリエイティブディレクター)

細田高広氏


これまでに500近い広告賞を獲得してきたクリエイティブが注目を浴びないわけはない。だが、そうした栄誉を除いても細田氏の業績には目を見張るものがある。

例えば、豪スポーツウェアブランド「クイックシルバー」のために開発した「トゥルー・ウェットスーツ」。海の中でもオフィスでも着られるウェットスーツは、世界のサーファーの間で話題を呼んだ。また、日産自動車の「インテリジェントパーキングチェア」。駐車を自動でアシストする技術を応用し、手を叩くだけで元の位置に戻るオフィスチェアを創作。CES(消費者向け家電の見本市)で大きな反響を呼んだ。さらには、ラグビーのニュージーランド代表チーム「オールブラックス」とAIGジャパンのために手がけた「プライドジャージ」。特殊な素材を使い、伸ばすと黒がレインボーカラーに見えるジャージで、同チームのメッセージ「Diversity is strength(多様性こそ力)」を表現した。

クリエイティビティは、キャンペーンをより強固なものにする。細田氏はそれを武器にニューヨークADC(アートディレクターズクラブ)賞やクリオ賞、スパイクスアジアなどで数多のグランプリを獲得。現在は社内で70人以上のクリエイティブを牽引し、新たなイノベーションの推進に励む。

同僚たちは細田氏の美点を「『暗闇』の中を牽引する力」と表現する。文字通り、その最たる例が日産のキャンペーン「The Reborn Light(再生した光)」だろう。EV車「リーフ」に使われたバッテリーとスティールを再利用、街灯を製作し、東日本大震災からの復興に取り組む福島県浪江町に寄贈した。

コロナ禍でも売上げが衰えなかったユニクロの成功要因の1つは、細田氏がグローバルコミュニケーションを牽引した点にある。今年、ユニクロは時価総額でH&Mを凌ぎ、世界第2位のアパレルブランドとなった。また、フィンテックで日本最大のスタートアップ「Paidy(ペイディー)」のブランディングやエクスペリエンス、新サービス展開を担当。投資が鈍る中、150億円超という資金調達達成にひと役買った。

型破りな発想を次々と具現化してきた同氏は、広告業界誌「宣伝会議」とも協働。その経験を生かし、教育講座「Disruption (創造的破壊)School」を開設した。年1度、全10回にわたるワークショップは多くのクリエイティブやマーケター、起業家たちの関心を呼び、昨年は申込受付開始から1週間も経たぬうちに定員となった。

40 Under 40 2020」の全リストはこちらから

(文:Campaign Asia-Pacific編集部 翻訳・編集:水野龍哉)

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