Ryoko Tasaki
2023年12月01日

世界マーケティング短信:マスク氏、X撤退の広告主を罵倒

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

Getty Images
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※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。
 

広告撤退は「脅迫」と反発 発端となった投稿は反省

イーロン・マスク氏が米ニューヨーク・タイムズ紙のイベントに登壇し、Xへの広告掲載を取りやめた企業を罵った。

ことの発端は11月中旬、反ユダヤ主義とされる投稿に対して、マスク氏が「あなたは真実を語っている」と返信したことだった。この影響でウォルト・ディズニー、IBM、アップルといった広告主が出稿を停止した。

壇上で「これまでの投稿で最も愚かだった」と反省した同氏だが、イスラエルを訪問したことは「謝罪訪問ではない」と断言した。さらに出稿停止した広告主について聞かれると「広告を載せなければいい」と主張。「お金で私を脅迫しよう

というのか? くたばってしまえ」と語気を強めた上で、同じイベントで先に登壇していたボブ・アイガー氏(ウォルト・ディズニーのCEO)に呼び掛けた。

広告のボイコットの影響については「会社を潰すことになるだろう」、そして広告主がXを潰したことは全世界が知るところとなり、利用者が判断するだろうと述べた。

JellyfishとAcorn-iが統合し「ジェリーフィッシュ・コマース」に

ブランドテック・グループ(Brandtech Group)のジェリーフィッシュ(Jellyfish)と、英エイコーン・インテリジェンス(Acorn Intelligence、通称Acorn-i)が、経営統合する。両者の統合により、ジェリーフィッシュ内に「ジェリーフィッシュ・コマース(Jellyfish Commerce)」が誕生する。複雑化したeコマースを簡素化し、小売ブランドが投資の意思決定を正しく行えるソリューションを提供していく。またマーケティング支出が消費者の購買意欲向上に寄与しているかを精査し、ブランドの独自性を確立できるよう支援も行う。

ブランドテック・グループはニューヨークに本拠を置くデジタルに特化したマーケティンググループで、2022年にユー&ミスター・ジョーンズ(You & Mr Jones)から名称を変更した。2018年に設立したAcorn-iを昨年6月に、2005年に設立したジェリーフィッシュ社を今年6月にそれぞれ買収している。

Acorn-iはAIを活用した独自のSaaS技術が特徴で、大手リテールプラットフォームとパートナーシップを構築しており、グループ内で最も急成長中の企業の一つ。一方のジェリーフィッシュは世界的にデジタルマーケティング事業を展開し、コンテンツ、メディア、データソリューションの包括的サービスを提供している。

Acorn-iの共同創業者であるクレア・レオン氏とロス・カヴェイユ氏は「私たちの目標は常に変わらない。優れた成果をいち早くもたらす強力なソリューションを、リテール/eコマースブランドの提供することです」とコメント。同社の最先端のオムニチャネル・ソフトウェアとサービスが、ジェリーフィッシュのプラ

ットフォーム優先のアプローチやテクノロジーを活用する能力と結合することで「私たちはeコマースソリューションのパイオニアになれる」と期待する。

ジェリーフィッシュのCEOであるニック・エメリー氏は「今のコマース市場はさまざまな動きがあり、騒然としている感がありますが、本当の意味でクライアントの要望に応えられる企業はない。一つの企業がコンサルティング、コンテンツ、アクティベーションを担っている例はありません」と述べた。
 

生成AIが与えるリスクに、多くの企業は未対応 ゴリン調べ

ゴリン(Golin)がコミュニケーションの専門家に対して実施した調査によると、企業の評判管理や危機管理にAIが与える脅威について96%が認識しているものの、約6割がまだ対応できていない。AIが組織やブランドに関する誤情報を拡散することを、回答者の76%が懸念している。

「AIツールによって、課題や危機管理への対応方法が完全に変わった」と、同社でリスク&評判担当エグゼクティブバイスプレジデントを務めるビクトリア・ブロフィー氏は語る。誤情報やボット、悪意ある行動などの特定や予測に活用できるのはAIの良い面だが、「生成AIは、強力な誤情報を作るための方法も提供する。フェイクニュースの蔓延自体は目新しくないが、生成AIの使用が増えていることを考慮すると、まったく新しい形の恐怖として力を持ってきます」。

また、企業の課題やリスクについて調べる際、従来の検索エンジンは最新の関連情報を提供する一方で、AIツールはニュアンスのあるストーリーや企業側からの反論をシェアするツールとして信憑性が低いことも明らかになった。
 

創造性は視点を変える アップルのクリスマス向け動画

アップルが、ホリデーシーズンに向けた動画「Fuzzy Feelings」を公開した。昼間は会社勤め、夜はストップモーション動画を制作する女性は、職場で嫌な思いをさせられる上司をモデルに、動画をiPhoneで撮影する。動画内の男性は風で衣服を吹き飛ばされたり、除雪機の雪に潰されたり、車に轢かれたりと散々な目

に遭う。だがある日、上司が手編みのクリスマスプレゼントを全員に配る。また、一人で夕食を撮る姿を目撃し、上司を見る目が変わっていく。

企画・制作はアップル専業のTBWAメディアアーツ・ラボ(TBWA Media Arts Lab)。楽曲はジョージ・ハリスン「Isn’t It a Pity」。メイキング映像からは、この動画も実際にiPhoneを使って撮影している様子がわかる。動画の概要欄には「クリエイティビティーには、視点を変える力がある。新しいレンズを通して物事を見ると、すべてが変わることもある」と書かれている。

【お知らせ】

Campaign Asia-Pacificが主催する「エージェンシー・オブ・ザ・イヤー2023」の、日本/韓国の結果が発表されました。詳しくはこちらをご覧ください。

(文:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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