世界中のユニークな宿泊場所を探せるプラットフォーム「Airbnb」が8月2日(サンフランシスコ時間)、デザインスタジオ「Samara」を社内に設置したと発表した。
創業者三名のうち二名はデザイナーというAirbnbは、事業活動においてデザインの持つ力を常に重視してきた。このたび設立されたSamaraは、Airbnbの価値やビジョンを新たな領域に拡大すべく、さまざまな経歴を持つ人材が結集。建築、サービスデザイン、ソフトウェアエンジニアリングなど多様な領域において、拡大の可能性を検討していく。
Samaraが初めて手掛けたプロジェクト「吉野杉の家」は現在、8月末まで都内で開催中の「HOUSE VISION 2016 TOKYO EXHIBITION」に展示されており、展覧会終了後は奈良県吉野町へと移築される予定となっている。
建築家の長谷川豪氏と共に設計された「吉野杉の家」は、一階が町の人々に開放され、散歩中に立ち寄っておしゃべりに興じたり、お茶を飲んだりと自由に使うことができる。特徴的な三角屋根の屋根裏(二階)は、外からやってくる宿泊客のための部屋となっており、Airbnbで予約が可能だ。
これまでのAirbnbは建物の所有者がホスト(提供者)だったが、「吉野杉の家」のホストはコミュニティー。地域によって運営される施設で、地域への金銭的なメリットをもたらす同社初の試みだ。
Samaraでは今後、吉野町での取り組みを検証し、同様の課題を抱える世界中の地域でも展開していく予定。同社は、コミュニティーと宿泊客の間に深い交流が生まれる拠点となることを目指しており、人口減少が進む地方において伝統文化の継承を支え、地域創生や未来創造に役立てていきたい考えだ。
2008年に設立後、プラットフォームとして成長を遂げてきたAirbnb。人々の絆を生み出す建物を実際に作った今回のプロジェクトが、ブランドに新たな一面を加えるきっかけとなるだろう。
(文:田崎亮子)