APAC(アジア太平洋地域)は、この1年間にブランドスータビリティ(適合性)違反が前年から最も大きく減少した地域の一つとなり、SIVT(悪意のある無効トラフィック)の比率も全体として減少していたことが、アドベリフィケーションを手がけるダブルベリファイ(DoubleVerify)の調査で明らかになった。同社は、この結果をAPACにおけるデジタル広告の成熟を示すものと捉えている。
ダブルベリファイは、世界の80の市場で2100以上のブランドが配信した1兆以上のインプレッションを分析し、2021年版の「グローバルインサイトレポート」でその結果を公表した。分析の対象は、デスクトップ、モバイルウェブ、モバイルアプリ、およびCTV(コネクテッドTV )の各プラットフォームで確認された、動画広告とディスプレイ広告のインプレッションで、2020年5月~2021年4月に測定したデータを前年同期のデータと比較している。
この調査によると、ブランドスータビリティ違反率が最も減少したのはAPACとLATAM(ラテンアメリカ地域)で、減少率はそれぞれ25%と26%だった。より成熟した市場であるEMEA(欧州・中東・アフリカ地域)と北米地域は、それぞれ1%と6%の減少にとどまっている。
APACのブランドスータビリティ違反率は8.5%で、EMEA(9.8%)やLATAM(9.2%)を下回り、成熟市場である北米(6.9%)に次ぐ低さとなった。この減少と歩調を合わせるように、ブランドスータビリティブロック率とインシデント発生率は増えている。2020年のレポートと比べて、APACのインシデント発生率は90%増加した。
また、全体的なSIVT/アドフラウド率も、APACは他のどの地域より低い0.8%となった。北米は1.5%、EMEAは1.6%、LATAMは1.1%だった。
世界的に見ると、Post-bidフラウド/SIVT率は1.4%で、前年の2.0%から30%減少したとレポートは報告している。ただし、検出されたスキームの数やそれらのスキームが影響を及ぼすデバイスとインプレッションの数を見ると、全体的なフラウド/SIVTの件数は前年からさほど変化していないという。同社は、毎日50万件の不正なデバイスの兆候を新たに検出している。
デバイスに目を向けると、アドフラウド/SIVT率はデスクトップとモバイルのウェブにおける減少により、すべてのデバイスで減少が見られた。ただし、一部のインベントリでは増加が確認されている。その一つがモバイルアプリ動画広告で、前年比で50%近い増加となった。
APACでは、動画広告のインプレッションの88%がモバイルデバイスから発生している。これは世界の他の地域(45%)の2倍近い割合だ。
レポートによれば、APACではモバイル広告の品質も向上している。アプリのフラウドがアドフラウド/SIVT全体に占める割合は12%から3%に減少し、モバイルアプリ動画のビューアビリティは26%改善した。その結果、APACにおけるモバイル動画広告のビューアビリティは平均80%となっている。
全体的な動画広告のフラウドも、APACでは42%の減少となったが、ディスプレイ広告のフラウドは1%増とわずかに増えている。
APACでは、プログラマティックに購入される動画インプレッションが増加中だ。2020年には、APACでプログラマティックに購入された動画インプレッションの数は全体の半数足らず(49%)だったが、2021年には62%に増加している。
APACでは動画広告の60%以上がモバイルアプリに配信されており、これが全体的な動画パフォーマンスにプラスの影響を与えていることが、視聴完了時のオーディビリティとビューアビリティ(AVOC)の測定で明らかになった。APACの全体的なAVOCは34%と、世界平均である11%の2.5倍に上っている。北米はモバイルアプリから発生する動画広告のインプレッションが最も少ない地域で、全体的なAVOCはもちろん、デスクトップとモバイルウェブのAVOCも最低だった。
レポートによれば、ビューアビリティはすべての地域で向上した。新興市場のAPACとLATAMは、動画広告のビューアビリティが前年同期比で12%増と、最も高い増加率を記録している。一方、EMEAでは3%の減少だった。北米は、IABの目標基準値である70%に今も達していない唯一の地域となっている。
LATAMは、ディスプレイ広告のビューアビリティでも9%という最大の増加率を記録した。APACは対前年比の増加率が最も低い4%で、ディスプレイ広告のビューアビリティは他のすべての地域より低い62%だった。