APACにおけるオンラインショッピングは、新型コロナウイルス感染症のパンデミックの影響により、必要に迫られ拡大したところから、徐々に定着し、小売消費における恒久的な変化へと転じそうだ。同地域では、現在、平均して「月に数回」オンラインでショッピングする人が42%に達し、オフラインのみでショッピングする人の31%を上回っているほか、「数カ月に1回」オンラインでショッピングする人は、オフラインだけでショッピングする人を66%も上回っている。
本調査は、2021年上半期にグーグルと共同で、オーストラリア、中国、香港、インド、インドネシア、日本、マレーシア、フィリピン、シンガポール、韓国、台湾、タイ、ベトナムの1万3000人(各市場1000人)を対象に実施された。得られた知見には、消費者はオンラインでお得な商品を積極的に探しているなど予想通りのものがある一方で、意外なものもある。たとえば、ルック&フィールを良くしたいという消費者の欲求はコロナ禍でも健在で、過去半年にオンラインショッピングで購入されたカテゴリーのトップ3は、衣類・アパレル(67%)、健康・美容(47%)、家電(40%)だった。
リプライズ・デジタルのAPAC担当eコマースディレクターで、レポートの執筆者でもあるリティカ・グプタ氏は、「APACの多くの市場は5倍もの規模にまで成長し、現時点ですでに2025年の予測値に到達している」という。このようなeコマースの加速の一因は、インターフェイスの開発や改善のロードマップを迅速に進め、テクノロジーを進化させてきたプラットフォームによるところが大きい。これに加え、プラットフォーム内広告によるオーディエンスターゲティングも重要な役割を果たしている。
この調査では回答者の半数が、オンラインショッピングの際、オンライン広告を見て新しいブランドや製品を見つけると答えている。マーケターとエージェンシーにとっては励みになる話ではないだろうか。また、APACの消費者の42%は、ショッピングのリサーチをするのに、ソーシャルメディアを最もよく使うという回答しており、ソーシャルメディアが重要なポイントとなっている。
このように、APACのeコマースは急成長したが、オンラインショッピングに対するアプローチには、市場による微妙な違いがある。リプライズ・デジタルでAPACのプレジデントを務めるピッパ・ベアローカー氏は、「APACでは、市場ごとに行動における根本的な違いがあることを改めて示した。よって、eコマースに関しては、ローカルファーストのアプローチを取り入れているブランドが大きく成功する可能性が高い」と述べている。
以下では、具体的にいくつかの市場を見ていく。
中国
- 実店舗では、買い物客の63%が「いつでも」買い物し、セールやプロモーションのタイミングを待つことはない。これに対し、オンラインショッピングでは、52%がセールの時期を待って利用する。
- オンライン購入者が挙げた購入のきっかけのトップ3は、「肯定的なレビュー」(71%)、「製品情報」(64%)「レーティングの高さ」(58%)だった。
- 中国のオンライン購入者は、特定のブランドではなく自分のニーズに忠実だ。購入者の75%は、オンラインで初めて知った新しいブランドを購入するのをいとわないと回答している。
インド
- インドのオンライン購入者の64%が、消費者による製品レビューを最大のメリットだと見ている。
- フリップカート(Flipkart)やアマゾンなどのマーケットプレイスは過去1年で、すべてのカテゴリーにおいて、製品発見の順位が上昇した。
- テレビ広告は今も重要なチャネルだと考えられており、オンライン購入者の64%が、新製品を見つける方法としてテレビ広告を挙げている。
日本
- 日本のオンライン購入者の61%が、「時間の節約」と「店に行く必要がない」ことの2つを、最大のメリットだと見ている。
- プラットフォーム首位の座は大手が争っており、過去1年はすべての製品カテゴリーで、製品発見の上位にアマゾンと楽天が入っている。
- 新しい製品の購入を検討する際には、オンラインショップが商品を探すための最重要ポイントだと考えられており、買い物客がこのチャネルを選択する確率は2倍に上る。
オーストラリア
- APACの他の地域と異なり、オーストラリアでは主要なオンラインショッピングの利用先はマーケットプレイスではない。3分の2のユーザーが、ブランドのウェブサイトを選択している。
- 回答者の3分の2は、送料が購入の妨げになるとしている。
- この1年で、すべてのカテゴリーで、イーベイやアマゾンなど、マーケットプレイスでの製品発見の順位が上昇した。オンライン購入者が新しい製品の発見に利用した割合は、イーベイが61%、アマゾンが52%だった。
インドネシア
- インドネシアの消費者の4分の3近くが、オンライン購入の場にブランドのウェブサイトよりもマーケットプレイスを選択している。
- インドネシアは広大な国土がスムーズなeコマースを難しくしており、買い物客の60%以上が、「配送にかかる時間」をオンラインショッピングの主なマイナス面だと考えている。
- 調査対象のうちの半数が、ブランドと製品を探す場としてソーシャルメディアを挙げている。
フィリピン
- フィリピンは、APACの近隣諸国ほどeコマースの巨大な流れに乗れていない。
- 買い物客の3分の2が、オンラインで発見した新しいブランドを試す一方で、オンライン購入者の57%は、セールや値下げを待って購入ボタンを押している。
- eコマースの欠点として、オンライン購入者の65%が、返品の難しさを挙げている。