飲料大手のコカ・コーラは、COP27(国連気候変動枠組条約第27回締約国会議)を後援する自社の決定を擁護し、気候変動との闘いにおいて「自らの役割を担う用意がある」と主張した。
このスポンサーシップ契約は、気候変動に立ち向かう団体や活動家から非難されている。その一つである環境NGOのグリーンピースは、コカ・コーラが年間1200億本の使い捨てペットボトルを生産していると指摘し、同社を世界有数のプラスチック汚染企業の一つに位置付けた。
こうした批判を受け、コカ・コーラは「海からごみをなくすという目標を共有し、この課題に対する意識を向上させるこの取り組みに感謝している」と述べ、「2030年までに、出所を問わず、当社が販売するすべてのボトルや缶の回収とリサイクルを支援する」ことから始まる同社の「野心的目標」を示した。
コカ・コーラの主張によると、同社はビジネスを正しく成長させるために、より多くのことをより迅速に行うよう尽力し、そのために「他の企業、市民社会組織、政府と協力し、この重要な問題に対する協調的な行動を支援し続ける」という。
コカ・コーラは、確かに最近、サステナビリティ・プロジェクトのために5億ユーロ(約708億円)を調達した。だが一方で、ペプシコと並び、4年連続でプラスチック汚染のトップ企業に選ばれている。
COP27は11月にエジプトのシャルム・エル・シェイクで開催される。2016年には、現在世界ワースト3位のプラスチック汚染企業とされるユニリーバがスポンサーとなり、2021年のCOP26ではジャガー・ランドローバーがスポンサーだったことから、今では複数の環境活動家が、この気候会議の正当性に疑問を投げかけている。
「コカ・コーラによるCOP27の後援は、この会議にとどめを刺す」と、ブランドアクティビズムエージエンシー、ドント・クライ・ウルフ(Don't Cry Wolf)の創設者で最高責任者のジョン・ブラウン氏は主張する。「COP27が、地球上で最も環境汚染を引き起こしてきたブランドに後援された、政治的な駆け引きの集まりに過ぎないことは、今や明白だ」
ブラウン氏は、英PR業界団体PRCAの「Misinformation in the Climate Crisis(気候変動における誤情報)」戦略グループが委託した最近のアンケート調査で、英国人の半数以上がCOP26の結果を知らず、3分の1以上が、COPは自分に関係ないと回答していることを強調した。
「総論として、コカ・コーラがCOPを後援するのは構わないと思う。しかしその前に、地域社会に根ざした有意義な活動をもっと支援すべきであり、それを行う勇気あるブランドだけが消費者の心をつかむことができる」とブラウン氏は語る。
アクティビストのネットワーク「ブランダリズム(Brandalism)」の広報担当者、キット・スピードウェル氏はこう批判する。「コカ・コーラは世界有数の汚染企業であり、水に関するスキャンダル、人権侵害、プラスチック汚染にまみれている。同社をCOP27気候サミットの中心に置くことは、気候政治の根幹が腐敗していることを示し、最初から会議の意図を損なうものだ」
グッドエージェンシー(The Good Agency)の創設者、クリス・ノーマン氏は、COP27は、今回のスポンサーシップを通じて、コカ・コーラが「自ら引き起こしている環境破壊に不十分な対応しかしていない」ことを白日の下にさらしたと皮肉った。
ノーマン氏は、2030年までにパッケージの25%を再利用可能なものにするというコカ・コーラの誓約は、「同社の行動が、プラスチックパッケージによる被害に対処するために必要な、最低限の水準を破滅的に下回っていることを示す一例だ」と断じた。
ノーマン氏はこう付け加える。「こんな遅々とした変化のペースでも、まるで問題ないかのような印象を与える」
「コカ・コーラが、バージンプラスチックの使用を中止することや、自社のパッケージが引き起こした汚染を一掃するために、さらに大規模な投資を行うことを表明しない限り、COP27への参加を正当化することはできないだろう」
このスポンサーシップ契約は、ツイッター上でも反発を受けている。英エージェンシー、アイリス(Iris)のグローバル最高戦略責任者で気候擁護者のベン・エッセン氏は、ツイッター上の主な論調は「ウクライナの独立に関する会議を、ロシアのプーチン大統領が後援する」ようなものではないか、という主旨だったと評する。
エッセン氏は、コカ・コーラがなぜ廃棄物ではなく、温室効果ガス排出量に注力しているのか疑問を投げかけた。「COP27が(廃棄物や生物多様性よりも)排出削減と気候変動への適応に主眼を置いているとすれば、ホスト国のエジプトは、石油を燃やす企業とは契約できないが、石油をプラスチックに変える企業となら契約できると考えるかもしれない。もちろん、こうしたサイロ化した捉え方は危険であり、危機の本質を見誤ることになる」
エッセン氏によると、前向きな点としては、世界が大企業に対し、ネットゼロ(温室効果ガスの排出量を実質ゼロにすること)への移行に真剣に取り組むよう求めていることだという。例えば、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)に出席したコカ・コーラのサステナビリティ責任者ベアトリス・ペレス氏は、2020年1月の段階ではまだ、人々が「ペットボトルを望んでいる」ため、同社は使い捨てペットボトルを廃止しないと発言していた。
だが、現在同社は、「2030年までに、販売されるすべてのボトルが、回収され、リサイクルされるような循環型エコシステムを構築するという、チャレンジングな目標」を掲げていると、エッセン氏は付け加えた。
同氏はさらにこう続けた。「使い捨てボトルを消費する数十億人を、循環型エコシステムの参加者に変えるには、マーケティングの大規模な変革と世界最大規模の行動変容プログラムが必要だ。マーケターとしては、ぜひ次のクライアントのブリーフで、このようなチャレンジングな課題が出されることを期待したいものだ」