ベインキャピタルによるTOB(株式公開買い付け)を巡るADKとWPPの応酬は、終わりが見えない泥仕合の様相を呈してきた。
10月16日、ADKは声明で、WPPの反対にかかわらず買収案に応じる旨を改めて発表。その翌日WPPは即座に反応し、異なるレトリックで先週の声明よりもいっそう辛辣にADKを批判した。
ADKの筆頭株主である世界最大の広告代理店グループは、ADKは「これまで、弊社とのシナジー構築の提案に対しほとんど対応してこなかったことを明確にしたい」と表明。
また、ADKが買収したアニメ及びコンテンツビジネスが「失敗に終わった」と痛烈に非難。そして同社の企業価値を疑問視するかのように、「ベインの今回の取引の主な目的はアニメビジネスと資産」とし、出資者として「アニメビジネスの規模と収益のスケールを知りたく努力してきたが、不成功に終わった」と続ける。
果たしてその「実態はいかなるものなのか?」。WPPは大仰に語りかける。
ベインによる13億5千万ドルの買収が「ADKの企業価値を著しく過小評価している」と批判したことを踏まえれば、WPPのこの論法はいささか驚きだ。これまでの両社の主張は、いかなるパートナーシップでも破綻させてしまうだろう。しかもWPPは、買収先としてのADKの魅力を弱めてしまうリスクを冒している。ベインに対し株価を引き上げる要求をしているのならば、尋常な戦略ではない。
更にWPPは、ADKが接触した財務的・戦略的パートナー候補との話し合いの詳細を開示するよう要求している。「ADKの経営陣はステークホルダー(利害関係者)からの真剣なアプローチに対応してこなかった。これまでの一連の動きは、果たして取締役会レベルできちんと話し合われたのか」と疑問を呈す。WPPはADKの経営をほとんど信用していなかったようで、この3月には植野伸一CEOを取締役会から追放しようと試みている。
ベインがTOBの終わる11月15日までに、ADK買収に必要な50.1%以上の株式を取得できるかどうかは定かではない。WPPは、提携を解消するためにはADKが認識しているよりももっと多くの条件をクリアしなければならないと主張する。ADKは「以前も提携解消を試みたが、実現できなかった」とも。
ブルームバーグによれば、香港のヘッジファンド、オアシス・マネジメント社がより透明性のある競争入札をADKに求めたという。そうなれば、ベインのTOB価格を上回ることは確実だろう。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)