ベインキャピタルによるアサツーディ・ケイ(ADK)の買収が成立した。ベインは1株3660円(33米ドル)で実施していた国内広告3位ADKへの株式公開買い付け(TOB)の結果、87%の取得に成功したと発表。TOB成立のため、ベインはADK全株の50.1%が必要だった。
これまでADKとその筆頭株主であるWPPとの関係は緊迫。WPPはベインが「ADKの企業価値を過小評価している」と非難、またADKに対しては「経営能力が欠如」し「株主の利益に反する行動をとった」と批判してきた。今回の買収は、米投資ファンドが日本の広告代理店を傘下に収めた初のケースとなる。
ベインは、「今後ADK経営陣と緊密に協力し、ADKの事業転換を加速化させるとともに、ADKの潜在力を迅速かつ全面的に実現するうえでの必要な非上場化に向けて尽力して参ります」と声明を発表。
ADKの植野伸一・代表取締役社長兼グループCEOは、「真の“コンシューマー・アクティベーション・カンパニー”になるために、財務面でも戦略面でも柔軟性が必要不可欠」で、それは「非上場化によってのみ実現可能と常々考えていた」という。ベインは「変革の次のステージを共に歩む最良のパートナーであると確信しています」とも。
ベインがTOBによってADKを買収する計画が明るみに出たのは10月2日。ADKは、WPPとの提携関係が「グローバルビジネスの成長とデジタル主導という目標の足かせになっていた」と言明。ベインはADKのコンテンツビジネスとアニメビジネスに関心を表明していた。ベインはこれまで数多くの日本企業にTOBで投資を行っており、9月には東芝メモリを2兆円(180億ドル)で買収する方針も発表している。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉)