P&G「パンテーン」が9月末より展開する広告キャンペーンは、就職活動で自分らしさを出せるよう背中を押す。
就職活動中の女子学生は、ダークカラーのリクルートスーツや白いブラウス、肌色のストッキング、「常識的な」カバンや靴など、画一的なファッションに身を包んでいるため一目瞭然だ。髪型についても同様で、髪の長い女性はポニーテールにまとめるのが王道となっている。
どのような身だしなみが適切か、あるいはマナー違反なのかをまとめた就職情報サイトなども、この風潮に加担し続けている。
だが、このようなリクルートスタイルは不要なのかもしれない。P&Gが全国の就職活動経験者(男女1,000人)に調査を実施したところ、就職活動生の81%が「企業の欲しい人物像にあわせて自分を偽ったことがある」、そして73%が就職活動時の身だしなみに「不満がある(あった)」と回答した。一方、服装や髪で個性を出して面接を受けることに賛成する企業は71%であった。
この調査結果を受け、パンテーンは「就活をもっと自由に」というメッセージの新聞広告、駅貼りポスター、動画広告を展開。ブランドマネジャーの大倉佳晃氏は「無意識のうちに『女性はこうあるべき』という固定概念にとらわれる傾向にまだまだある」と感じていたとし、「ありのままの姿で自信を持ってチャレンジできるような社会づくりのきっかけ」をできればと考えたと、プレスリリース内でコメントしている。
Campaignの視点:
多くの人々が「自分ごと」として共感でき、変化の機運が熟した社会テーマを扱った好例といえるだろう。製品と関連したテーマであり、P&Gが発するメッセージも身の丈に合っている。
とはいえ、雇用側が果たして個性を歓迎しているのかは不明だ。リクルートスーツでなくても良い旨を明記する会社もあるが、ではなぜ多くの企業ではそのような連絡をしないのだろうか。この広告によって、就職したかった会社に入れない学生が出てこないことを望むばかりだ――結果的に、そのような会社には入らない方が良いのかもしれないが。
このキャンペーンが今後、男子学生に向けた展開も考えているのかも注目していきたい。ひげを剃り、清潔感のある髪型にする等々、男子学生も自分らしさを出しにくいという実態がある。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:田崎亮子)