既成スーツやシャツを販売する紳士服専門店のAOKIが、オーダースーツを手ごろな価格で提供する「アオキトーキョー(Aoki Tokyo)」を展開し、リポジショニングを図る。
グランドデザインはイナモト・アンド・カンパニー、空間デザインはアーキセプトシティ、UXデザインはPARTYが担当。本格的なオーダースーツを比較的低価格で、最短3週間で届けることをコンセプトにしている。
イナモト・アンド・カンパニーによると、アオキトーキョーではスタイリストが顧客を採寸し、データは再注文時に活用できるよう、デジタル上で保管される。近い将来には3Dスキャンを導入し、初回オーダー時の所要時間をさらに短縮する予定だ。
アオキトーキョーが目指すのは、日本らしい職人技とデザイン力だ。ロゴのTの字は、メジャーでの採寸時に端が垂れ下がった形に由来。レイ・イナモト氏はプレスリリース内で、「日本のデザインや東京のクールさといった、他の場所には無いレピュテーションを活かし、高級感やデザインの美しさなどの資質を示した」と述べている。
店舗は、銀座と池袋の2店舗。大都市圏のビジネス街やターミナル駅の近くに出店することで、従来のAOKIではリーチしきれない若手市場や、目の肥えた消費者をターゲットにしている。
室井淳司氏(アーキセプトシティ設立者)によると、店舗のコンセプトは「デザインに目がきく都内の消費者の、ステップアップとなる必要があった」という。「見た目は進歩的でありながら、機能面では合理的な空間をデザインしました」。また、携帯電話の充電ができるプラグを用意するなど、きめ細かなサービスも提供している。
Campaignの視点:
AOKIグループはアオキトーキョーの立ち上げにより、ゾゾなどのオンライン小売業と直接競合することとなる。ゾゾは昨年、採寸用のゾゾスーツを無料配布し、ジャストサイズのスーツやカジュアルウェアのオーダーサービスを開始している。
特段スタイリッシュとはいえないスーツを予算重視のサラリーマンや就職活動生に提供してきたAOKIグループにとって、これは大胆なアプローチだ。マスマーケット向け市場におけるパーソナライゼーション需要の高まりや、職場でのスーツ着用率の低下などといった変化を示したものといえよう。
アオキの名を残すことの是非は、議論の余地がある。低価格品から高級品へのシフトは、その逆よりも難しい。だがアオキブランドは広く知られており、オーダースーツを手ごろな価格で提供するというコンセプトは新規顧客だけでなく、アオキの既存客にも魅力に映る可能性がある。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:田崎亮子)