Emma Shuldham
2021年2月26日

インフルエンサーの役割が進化、2021年ブランドが注目すべきパートナー

激動の2020年は、ブランドによる2021年のインフルエンサーキャンペーンにどのような影響を及ぼすのか。

エマ・シュルダム(Emma Shuldham)氏は、ブランドとタレントのパートナーシップを手がけるITBワールドワイドのマネージングディレクター。
エマ・シュルダム(Emma Shuldham)氏は、ブランドとタレントのパートナーシップを手がけるITBワールドワイドのマネージングディレクター。

昨年の今頃、水晶玉をのぞき込み、2020年のトレンドを正確に予測した専門家がいたならば脱帽するしかないが、もちろんそんな人はいなかった。とはいえ、現実になった予測はいくつかある。「メディアの細分化が一層進む」は現実になった。「消費者はますますデジタルデバイスで買い物をするようになる」もそうだ。「ソーシャルメディアが世界を席巻する」も現実となった。

確かにこれらはどれも実現した。ただし、スピードと規模が、おそらく我々が想像していたものとは違っていた。世界的なパンデミックと、それにともなう社会と政治の不安定化を背景に、ソーシャルメディアの状況は激的に変化し、人々がインスピレーションを得たり、コンテンツを消費したり、商品を購入したりする方法と場所に大きな変化をもたらした。

少し振り返るだけで、TikTok(ティックトック)とTwitch(ツイッチ)の爆発的な成長やインスタグラム・リールの登場、延々と続くインスタライブ、大量のパンの焼き方動画やバーチャルのフィットネスクラス──しかも、これらはほんの表層に過ぎない。

だが問題は、影響力があるメディアが定まらないこの時代に、ブランドはどうすればコンテンツをノイズに埋もれさせずに届けられるかだ。

より少なく、より大きく、より良く:ブランドパートナーシップにおける真の信頼性の時代

意識的かつ控え目な消費行動の高まりとはつまり、人々が購入を減らし、何にお金を使うかを熟考するようになったということだ。派手で過剰な裕福さの誇示も、歓喜して新製品を開封する動画も、ロックダウン中の人には響かない。エンゲージメントは重要な指標であり、コンバージョンへの影響を高める可能性があるが、タレントとオーディエンスの間に真の共鳴があることを示すためには、ブランドは時間をかけてオーディエンスの声に耳を傾け、ユーザーの行動を分析する必要があるだろう。より正確な情報に基づく戦略を策定し、共感を呼び真に信頼できる関連性の高いクリエイティブコンテンツを作ることが求められる。

インフルエンサーの実際の価値は、オーディエンスの規模ではなく、彼らが持つインパクトと実際に及ぼす影響で決まる。真の信頼性の構築を達成するには、ブランドとインフルエンサー双方が「より少なく、より大きく、より良く」という考え方でエンゲージメントに取り組み、より良い結果をもたらす長期的プロジェクトのために、ブランドとの関連性と親和性のあるパートナーを厳選すべきだ。ブランドが望ましい結果を生み出すためには、最初から極めて明確な目標を設定する必要があり、クリエイター、ストーリーテラー、アドボケイト(支持者)、リファラ―(言及する人)、ロイヤリスト(忠実なファン)などを適切に組み合わせたスマートな戦略の構築が不可欠となる。

雇われた「顔」としてではなく、発信力のあるアドボケイト

消費者(特にZ世代)は社会や環境に関する問題への意識と関心を高めており、ブランドに対しても、単に製品やサービスを提供するだけではなく、それ以上の何かを主張することを望んでいる。

2020年の社会正義の危機によってアドボケイト、つまり各自の価値観を通して社会に影響を与え、自分たちのプラットフォームをより大きな善のために活用する変革者たちが台頭した。彼らは製品主導の物語ではなく、人間を中心としたストーリーと変化のアジェンダに焦点を当てる。

アドボケイトはコミュニティの中で実際の影響力を持ち、他者の行動に具体的な変化をもたらすことができる。彼らは報酬を得てブランドの顔になるだけではなく、発信力によってブランドに長期的な価値をもたらすアンバサダーになる。

こうしたアドボケイトたちとの重要な価値観に関する透明でオープンな対話は、あらゆるパートナーシップの中でもますます重要な役割を担うようになっている。

「真のインフルエンサー」登場に道を開く

フェイクニュースや経済、環境、政治の不確実性をめぐる不安が広がる世界において、「真のインフルエンサー(genuinfluencer)」(トレンド予測企業WGSNによる「genuine influencer」を意味する造語)とは、プラットフォームを誤情報と戦うためのツールとして用いる人たちのことだ。彼らは、公的機関──具体的には、世界保健機関(WHO)、英国やフィンランドの政府など──から公式に依頼を受けるケースも増えており、公的機関側も、これらのインフルエンサーには、対象コミュニティに真実を広める力があることを認めている。

これら公的機関は、予算を増やすことでその規模と影響力をより高められることを認識しつつあり、まだこれは始まりに過ぎない。成功の鍵となるのは、ひとつの方法をすべてに当てはめるアプローチを取らないことだ。そして、どのように情報が収集されるかを慎重に確認し、十分な調査を行って、ひとつひとつの問題の本質を正確に理解することで、対象となる層に対してより適切なメッセージを伝えられるようにすることだ。

 

提供:
Campaign; 翻訳・編集:

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