先週の「世界マーケティング短信」でも簡単にご紹介したこの調査。回答者の大多数は(86%)は「ピッチのプロセスは時間的・コスト的に極めて大きな負担」と答え、約3分の2(64%)は「エージェンシー文化を破壊する」、半数以上(54%)は「従業員のメンタルヘルスに悪影響を及ぼす」と答えた。
調査結果は「ピッチ・スマート」と題したメディアセンス初の調査報告書にまとめられ、ピッチの問題点とその対策について言及。
曰く、「エージェンシーで働く限りピッチを避けては通れない。だが現状では、広告主からのプレッシャーがますます強まっている」。その要因の1つとして、「クライアントが望むものと必要とするものが乖離している」ことを挙げる。
また、広告主がエージェンシーを選ぶ際の透明性の欠如についても言及。エージェンシーにクライアントの透明性を10点満点で採点してもらったところ、回答者の平均は4点だった。
今回調査対象となったのは、グローバルエージェンシーやその持株会社、独立系エージェンシーのディレクターを始めとする100人以上の幹部クラス。
調査結果から、メディアセンスは「広告主がエージェンシーを選ぶ際のピッチプロセスと基準は、今のままでは機能しなくなる」と明言。早急な改善が最重要課題としている。
同時に、ピッチに関する肯定的な見方についても紹介。「社内チームにとって価値ある学びの場」と答えた人は84%、「チームの能力を最大限に誇示できる機会」は83%、「従業員を鼓舞できる機会」は44%(逆に『そうは思わない』は35%)だった。
だが、46%は「ピッチのための人員確保が難しくなっている」と答え、(『そうは思わない』は34%)、43%が「提案依頼書(RFP)の選別が難しくなった」と答えた。
一般的にピッチの初期段階では、エージェンシーがクライアントからの情報提供依頼書(RFI)に応え、客観的データを提出する。こうした慣例についてメディアセンスは「エージェンシー側はすぐにデータを用意できるので、それほど面倒な仕事ではない」と記すが、「エージェンシーの能力を示すことにならず、効果的手段ではない」と答えた人は94%に達した。その理由として、「RFIはエージェンシーの文化やアイデンティティー、独自性を反映しておらず、微妙なニュアンスが伝わらない」としている。
英広告業界団体IPAと広告主団体ISBAは昨年、ピッチの改善を目指すガイドライン「ピッチ・ポジティブ・プレッジ(Pitch Positive Pledge)」を発表。それから1年の節目にこの調査報告書は発表された。Campaignは5月末の記事で、「ピッチの改善は進んでいるが、目標を達成するには新たなアプローチが必要」と書いている。
メディアセンスのマネージングパートナー、ライアン・カンギサール氏は以下のように語る。「広告主にとって、適切なパートナーを見つけるためのピッチは今も必要な手段。しかし今回の調査結果で、プロセスをより効率化し、実用的かつ透明性の高いものにしたいという要望が業界内で非常に強いことがわかった」
「広告主はエージェンシーの様々な側面を把握したいと考えるのだろうが、その能力と価値により的を絞り、適切で有意義なプロセスを再考すべき」
調査報告書の全容は、メディアセンスのウェブサイトからダウンロードできる。
(文:ベン・ボールド 翻訳・編集:水野龍哉)