信頼できる情報筋によると、ディズニーは30億米ドル(約3300億円)規模のグローバルメディアビジネスを主にピュブリシスとオムニコムに委託するようだ。このピッチに関しては、世界のエージェンシーの間で激しい競争が繰り広げられていた。
ピュブリシスはディズニーパークスに加え、新たな動画配信サービス「ディズニー・プラス(Disney+)」のメディア戦略も担っていく。ディズニーパークスは、電通傘下のカラが請け負っていた。
また、ディズニーはピュブリシス所有のデータマーケティング会社エプシロンに強い関心を示しているという。ピュブリシスは先月、39億5000万ドル(節税効果を差し引いた額)を投じたエプシロンの買収を完了。この額はエプシロンの調整後利払い・税・償却前利益(EVITDA)の8.2倍に相当する。この8月、ピュブリシス傘下のスターコムは製薬大手ノバルティスのグローバルメディアプランニングとメディアバイイングを勝ち取ったが、その際もエプシロンが重要な役割を果たした。
Campaign USが得た情報では、ピュブリシスはディズニーのピッチのために「ピュブリシス・イマジン」と称する専門チームを編成。傘下のゼニス・オプティメディアとエプシロンが中心となり、そのデータ提供が評価されたという。
更にこの情報筋は、オムニコムがメディアチャネル(ABC、FOX、ナショナルジオグラフィックなど)と制作スタジオ(マーベル・スタジオ、ルーカスフィルム、ピクサー、ウォルト・ディズニー・スタジオ、ウォルト・ディズニー・アニメーションなど)の戦略を担っていくと言及。ディズニーは昨年、興行収入10億ドル超えの作品を5本手がけており、映画史上初の快挙を達成している。
オムニコムはディズニーのグローバルメディアビジネスの大半を担っていく模様だ。以前はホライゾンメディアがメディアチャネルを管轄していた。
オムニコムは今回のピッチのために「OMG23」という新たなエージェンシーを設立。人材やデータの提供で秀でた一面を示した。「23」の名称は、ディズニーが設立された1923年にひっかけたもの。オムニコムのディズニー関連のビジネスは、2020年には約50%成長するとしている。
Campaign USによれば、インドにおけるディズニーのビジネスは引き続きWPPが担っていく。
米メディアリンク社が協力して行われた今回のピッチは、メディアビジネスに関して過去3年で最大のもの。5月に幕が切って落とされ、7月末から8月半ばにかけては競争がヒートアップ。ブエノスアイレスやムンバイ、東京、ロンドン、ロサンゼルスなどで数多くのプレゼンテーションが行われた。メディアリンクはこの件に関しコメントを控えている。
またオムニコム、ピュブリシス 、電通、ホライゾン、そしてディズニーの各社も現時点で沈黙を守っている。
ディズニーとオムニコムの協働関係は長い。オムニコムがディズニー映画のメディア戦略をピュブリシスから継承したのは2013年のことだった。
ディズニーは一昨年末、21世紀フォックス社の買収を発表。昨年6月には新たな買収額を提示し、総額713億ドルに上った買収は今年3月に完了している。
(文:リンゼー・スタイン、オリバー・マカティア 翻訳・編集:水野龍哉)