アジア太平洋地域のマーケティング界で名の知られるリクルーターの1人、タイロン・ジュリアーニ氏がオプティアパートナーズ(本社・東京)を辞し、ソーシャルメディア「リンクトイン(LinkedIn)」のコーチング役を担う。
同氏はオプティアで14年間、ソーシャルセリングの指導を担当。昨年10月には「フォーブス・コーチ・カウンシル(Forbes Coaches Council)」の正式メンバーになっている。
「リンクトインはB2B(企業間電子商取引)を生み出すプラットフォーム。これまでの育成やエクゼクティブサーチの経験を生かし、世界中の起業家精神に溢れた人々がリンクトインをより活用できるよう手助けしていきたい」。今後は月20人の顧客指導を目標とし、Q&Aスタイルを中心とした7週間の研修プログラムを運営していく。
コーチングは不特定の分野の人々が対象だが、「広告代理店の経営陣はもっと効果的にリンクトインを利用できるはず」と指摘。「雇用主としてのブランディングや新たなビジネスチャンスにこのプラットフォームを有効活用している代理店はほとんどありません」。
また、「代理店トップたちは自ら登場して自社の紹介に努めるべき」とも。更にリンクトインは「民主的プラットフォーム」であることを強調する。「誰もがWPPのサー・マーチン・ソレルCEOと同じプラットフォームを持て、正しい戦略を使えばそれを自由に操れるのですから」。
課題の1つは、広告界がリンクトインを「退屈で注目度が低い」と考えていること。「単に人材を探す場としか見ていないのです。彼らはそう思い込んで使っていますが、そんな使用ルールは誰も決めていない。元来はクライアントが作るツールなのです。オンラインの履歴書ホルダーとしてだけ見ていると、大きなチャンスを逃すことになります」。
大手代理店に比べ、規模が小さく専門性の高い代理店は適応力が高いという。米国でリンクトインをフル活用しているユーザーとして、ゼニス(Zenith)のイノベーション責任者であるトム・グッドウィン氏やBAMF の共同創立者ジョシュ・フェッチャー氏などを挙げる。
「もうフルタイムのリクルーターになるつもりはない」というジュリアーニ氏は、人材採用に関して守旧的な広告界への不満も隠さない。
「この業界は何も変わらないと悟ったのです。無関心と無気力が蔓延している。私は熱意のある人々と仕事がしたいのです」
同氏は今後も東京に拠点を置く。リンクトインの存在感はまだ日本では小さく、ビジネスの人脈作りにはフェイスブックが好まれる。だが米国では対照的に、ホワイトカラーの70%がリンクトインにアカウントを持っているそうだ。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:岡田藤郎 編集:水野龍哉)