Brittany Kiefer
2021年3月12日

「ノーマル」はノーマルにあらず ユニリーバの新戦略

今後は広告やパッケージで「ノーマル(普通、標準)」という言葉を使わない −− 日用消費財大手ユニリーバが、新たなグローバルビジョン「ポジティブビューティ」を発表した。

2019年のダヴの広告。ユニリーバはさらなる多様性の表現を公約した
2019年のダヴの広告。ユニリーバはさらなる多様性の表現を公約した

「ノーマル」という言葉をなくす方針は、ビューティー業界のインクルージョン(包摂性)とジェンダー平等をさらに推進していく「ポジティブビューティ」の一環。ダヴやライフブイ(Lifebuoy)、アックス(Axe)、サンシルクなど、ユニリーバが持つ100以上のビューティー及びパーソナルケアブランドに適用される。

「公平かつインクルーシブ、そして地球にとってもサステナブルな新しい美の時代を後押ししていくため」(同社スポークスパーソン)

ユニリーバは世界で展開する200以上の製品のラベルと数百に及ぶブランドコミュニケーションアイテムを再点検し、「ノーマル」という言葉が使われているかどうか調べたという。

さらに今後は、インフルエンサー広告も含めたすべての広告において起用するモデルの体型やサイズをデジタル処理で変えることはしないと言明。また、マイノリティーに属する人々をより積極的に取り上げて多様性を高めていくこと、これらの人々に関する調査を強化し、最適な商品開発を推進していくことも誓約した。

こうした施策に加え、ポジティブビューティでは環境問題へのさらなる貢献をうたう。

製品には再生可能な生分解性の天然素材をより積極的に活用。2030年までに150万ヘクタールに及ぶ土地と森林、海洋の保護と再生を支援していく。また、これまで取り組んできた2023年までに動物実験を廃止する運動を強化。すでに同社の23のビューティー及びパーソナルケアブランドが動物愛護団体「PETA」の認証を受けているが、さらにその数を増やしていく。

「ユニリーバの顧客は世界で10億人おり、広告を目にする人々はそれ以上。我が社のブランドは消費者の生活に大きな影響力があります。だからこそ、悪影響を及ぼす『尺度』やステレオタイプを排し、より多様でインクルーシブな美の定義を形成していく責任があるのです」。こう話すのは、ビューティー・アンド・パーソナルケア部門責任者のサニー・ジェイン氏。

「もちろん、製品やパッケージから『ノーマル』という言葉を取り除くだけでは問題の解決になりません。しかし重要なステップにはなる。これは、ポジティブビューティというビジョンの下で取り組む数多くの施策の1つに過ぎません。このビジョンは人間と地球にとって有害なものを減らすだけでなく、有益なものを増やしていくことを目的としています」

「社会・環境問題への消費者の関心が高まり、こうした問題への関与を強めるブランドはこれまで以上に消費者から強い支持を受けるようになった。ポジティブビューティがますます我が社のブランド力を高め、事業に成功をもたらしてくれると確信しています」(以上、同氏)

ユニリーバはこの発表に先立ち、英米など世界9カ国で計1万人を対象とした調査を実施。その結果、広告やパッケージに記された「ノーマル」という言葉に「否定的印象を抱く」と答えた人が7割に及んだ。特に、18歳から35歳までの若年層では8割に達した。

ユニリーバは2016年から国連の女性機関UN Womenが提唱する「アンステレオタイプ・アライアンス」に参画、他の主要ブランドやエージェンシーとともに牽引的役割を果たしている。

(文:ブリタニー・キーファー 翻訳・編集:水野龍哉)

提供:
Campaign UK

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