日用消費財大手のユニリーバは、インクルーシビティー(あらゆる人を包括していくこと)に取り組む計画を発表し、女性やマイノリティーグループが運営する企業と協力すること、サプライチェーン全体が生活賃金を得られるよう働きかけること、そしてインクルーシブな広告を増やしていくことを明らかにした。
世界で約400のブランドを展開する同社は、世界で二番目に大きな広告主という立場を活かして「変化を推し進めていきたい」と考えている。
広告に登場する人々や制作に携わる人々の多様性を確保することも掲げているが、具体的な目標数値は明かしていない。また、インクルーシブな広告表現を推進していくことで、広告のステレオタイプの問題にも取り組んでいく。
以上のようなコミットメントは、同社が21日に発表した公平でインクルーシブな社会のための計画に含まれているものだ。
女性や、公平に評価されていない人種やエスニシティーの人々、障害を持つ人々、LGBTQI+の人々などが所有・管理するサプライヤー企業には、2025年までに年間20億ユーロを支出する。これらの中小企業をサプライヤーに加え、新しいサプライヤー開発プログラム(スキル、資金調達、ネットワーキングといった機会へのアクセスを提供する)を通じて成長を支援していくという。
これとは別に、同社の小売バリューチェーンの中の500万社もの中小企業に向けて、2025年までにスキルや資金調達、テクノロジーへのアクセスを提供し、事業成長を支援する。
社内のダイバーシティーの向上において、同社はDEI(ダイバーシティー、公平性、インクルージョン)の戦略を新たに立てた。採用における障壁や偏見を排除し、各国の人口構成を反映した組織を実現し、多様性に富む従業員が活躍できるようリーダー層に責任を課すことなどが盛り込まれている。具体的な数値目標や期限については、明かされていない。
他にも、同社に物品やサービスを直接提供するすべての人々が、2030年までに「最低でも生活賃金、またはそれに相当する収入」を得られるようにすることも発表された。このイニシアチブが特にターゲットとしているのは、製造業や農業に従事する低賃金の労働者。彼らが「貧困の連鎖から抜け出せる」ように、同社はサプライヤーや他企業、政府、NGOと協力しながら、世界中の誰もが生活賃金を得られるよう変化を促していく。
社会やテクノロジーの変化に対応できるよう、2025年までに全ての従業員に対して、スキルの再習得や能力向上のためのトレーニングを行うことも、併せて発表された。スキル向上によって従業員は「社内外を問わず、生活を守ることができるように」なるという。さらに、雇用を守りつつも柔軟性が高い雇用モデルを開発していく。
社外においては、若者の就業機会の確保のため、2030年までに1000万人を対象に、仕事に必須なスキルを身につけられるよう支援する。また同社のアプレンティスシップ制度(見習い制度)についても、世界中で拡充していく。
社会的平等を実現するには、協働しながら取り組んでいく必要があると、ユニリーバのアラン・ジョープCEOは語る。
「世界が現在直面している2大脅威は、気候変動と社会的不平等です」とジョープ氏。「社会的分断が昨年、一層拡大したことは疑いようがありません。生活水準を上げ、ダイバーシティーを尊重し、人材を育成し、あらゆる人が機会を得られるような社会を構築するためには、一丸となって断固としたアクションをとる必要があります」
「現在私たちが経験している社会の大きな変化は、今後も加速していくことでしょう。我々が取り組もうとしているアクションはこの変化に備えるもので、ユニリーバをより良く、より強い企業にするものです。健全な社会なしに、健全なビジネスはあり得ません」
(文:ジェシカ・グッドフェロー、翻訳・編集:田崎亮子)