David Blecken
2017年8月23日

ファンにヘッドバンギングを促すソニーミュージック

メタルコアバンド「Crossfaith」 のファンに、「Make it Metal」が突きつけた挑戦とは。

ファンにヘッドバンギングを促すソニーミュージック

昨今、音楽にお金を払いたがらない人は少なくないが、ソニーミュージックとしては、せめて何らかの代価を払ってほしい。そこで同社はオグルヴィが開発した先端技術「Make it Metal」とコラボレートし、大阪で結成されたメタルコアバンド「Crossfaith」の、気の利いた新曲プロモーションを発案した。

その案とは、8月2日発売のシングル「Freedom」に収録された「Diavolos」 を聴くには、ウェブカメラの前でヘドバン(音楽に合わせて激しく頭を振る「ヘッドバンギング」のこと)をしなければならないというもの。それも、申し訳程度のヘドバンではない。曲の最後まで頭を振り続けないと、音楽や映像はストップしてしまう仕組みだ。

日本は健康や安全への注意喚起が徹底している国なので、ヘドバンを始める前の注意書きもきちんと表示される。まず「安全第一」がモットーであり、「自分の体力・首の筋力に応じてくれぐれも無理をせず自己管理でヘドバンしてくれ。周囲も安全確保ができているかチェックだ。万が一気分が悪くなったらすぐにヘドバンを中止し、その足でCDを買いに行くように」と続く。また、ペース配分を考えることも奨励している。

オグルヴィによれば、このサイトは深層学習(ディープラーニング)を用いて、ファンのヘドバンの出来具合をモニターしているとのことだ。曲の最後までヘドバンを続けると、その出来具合に応じた個人ごとの作品を画像追跡アルゴリズムが作り出す。

オグルヴィ・ジャパンのチーフ・クリエイティブ・オフィサー、アジャブ・サムライ氏は声明の中で、「従来の」音楽プロモーションテクニックはもはや効力を失ったと述べている。「今やミュージシャンたちが芸術、広告そしてテクノロジーを、スマートかつエキサイティングな方法で融合する時代なのです」

Campaignの視点:
どのような技術なのかという興味から、Campaignでもヘドバンに挑戦してみたところ、メタルコア初心者であってもヘドバンの回数が425回というまずまずの結果だった。ファンとの良好な関係構築を遠隔から行うには、最高のアイデアだろう。安全のための警告は無視するかもしれないが、このシンプルさ、面白さ、チャレンジングさの組み合わせは強力だ。日本人の生真面目さを考えると、本当にCDを買いに行く人たちもいるかもしれない。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳:岡田藤郎 編集:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

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