マッキャン・ワールドグループが実施したグローバル調査で、APACの消費者はコロナ禍で増大する経済的不安定と社会的不平等、人種差別を危惧し、「ブランドは夢を売るのではなく、こうした不安の解消に取り組むべき」と考えていることがわかった。
同社の調査「文化と新型コロナウイルスについての真実(Truth About Culture and Covid-19)」は昨年3月に始まり、今回が9回目。APACでの調査対象国・地域はこれまで中国・インド・日本だったが、新たにオーストラリア・フィリピン・マレーシア・シンガポール・香港・インドネシア・韓国が追加され、世界25市場となった。
APACにおける調査結果は各市場の社会・経済状況や人口統計、文化的差異を反映し、様々な傾向を示した。
例えば、政府への信頼度では日本を除く各市場で高い数値を記録。日本では33%の回答者が「政府は国民を裏切った」と答え、世界平均の27%を上回った。対照的に中国とシンガポールでは政府への不信感を訴えた人はわずか9%。また「政府は感染拡大への備えができていた」と答えた人が中国で90%、シンガポールで70%に上ったのに比べ、日本は13%に過ぎなかった。
さらに、政府が推奨する感染拡大防止のガイドラインに「慎重に従っている」と答えた人も中国が最も高く、73%。それに次ぐのが豪州とシンガポールの70%で、いずれも世界平均の58%を上回った。日本は34%だった。
感染拡大の震源地となった中国では、アジア人差別への高まりを懸念する声も強かった。コロナ禍で人種差別主義者の増加を危惧する人は中国で28%、シンガポールと香港は29%でほぼ3分の1。世界では18%だった。
その一方、社会的不平等が浮き彫りになったと答えた人はAPAC全体で38%。
経済的不安もAPACは世界平均より高く、経済への悪影響を心配する人は半数以上の57%。また、失職や経済的苦境を危惧する人は39%で、世界平均の31%を上回った。
中国は経済的問題への関心がどの国よりも高く、失職や経済的苦境を危惧する人は60%。最も低かったのは豪州で、26%だった。
こうした調査結果から浮かび上がるのは、ブランドには生活支援の役割をもっと担ってほしいという消費者の思いだ。APACの半数以上の人(54%)は「ブランドは夢を与えるようなメッセージに注力するのではなく、民衆の不満や不安を理解するべき」と考えており、その割合は2018年の41%から大幅に増えた。
コロナ後の消費意欲については傾向が分かれ、インドやフィリピンなどでは4人に3人が「出費に慎重になる」と回答。一方、日本では55%、韓国では69%が「今までできなかったことをする / 買えなかったものを買う」と答えた。
(文:ジェシカ・グッドフェロー、翻訳・編集:水野龍哉)