ユニクロと、スウェーデンオリンピック委員会が、同国オリンピック・パラリンピックチームのウェアを今後4年間提供する契約を締結した。自国ブランド「H&M」から切り替えることとなる。
ユニクロは五輪大会のオフィシャルパートナーではないが、今回の契約によって、2020年東京五輪ならびに2022年北京冬季大会でユニクロのウェアが着用されることとなる。
同社は当初、日本選手団へのユニフォーム提供を望んでいたが、その願いはかなわなかった(理由は明らかにされていない)。だがスウェーデンとのパートナーシップは「ごく自然な流れ」であったと、ファーストリテイリングの代表取締役会長兼社長の柳井正氏は記者発表会で語った。スウェーデンの人々の美意識の高さやデザインセンスは、ユニクロの日本ブランドとしての原点に通じるものがあるという。スウェーデンには昨年、1号店をオープンしている。
ユニクロはアジア以外、特に欧州への拡大に力を入れている――。第三者の立場からこのようなコメントを寄せてくれたのは、アサツー ディ・ケイの海外事業セクターでエグゼクティブ・ストラテジー・ディレクターを務める末松真人氏だ。
「国旗の横にブランドロゴが配置されるということは知名度向上のみならず、特に新しい市場に進出していく初期段階において、ブランドの威信を高めることにつながります」。また、自国ブランドの品質が国際的に認められたことの証として、日本の視聴者の印象に残り、それが価格設定においても力を発揮するという。
今回のパートナーシップ締結は、ユニクロがファストファッションブランドとしてだけでなく、真のスポーツブランドとして進化してきたことの象徴といえるだろう。アスリートからの支持を得てきた商品の機能性を日本国内で、そして今後は海外でも強く訴求していく。
「このスポンサーシップは、スポーツの世界に深く入り込むための、非常に鋭い判断」と語るのは、マッキャン・ワールドグループのチーフ・ストラテジー・オフィサー、ジョン・ウッドワード氏だ。「昨今のさまざまな政治的対立の中で、2020年東京五輪には人々の心を一つにするポジティブな力があると、特に若い世代はみています。ここに参入することはユニクロにとって、非常に好ましいことなのです」
一つのチームを選んでスポンサーになることにはリスクがあるが、「スウェーデンチームは、誰からも愛されるチーム。健全で健康的で、スポーツマンらしく、そして何よりも政治的に中立なチームとみなされています」とウッドワード氏。
「今回のスポンサーシップによって、日本選手団のスポンサーとなった場合のような衝撃を与えることも、選手のための純粋な競技用ブランドとしてイメージを転換することもないでしょう。それでも、ブランドのレレバンス(共感性)を拡大し、世界中にブランドを知らしめることにつながるはずです」
昨年は、長きにわたってナイキと契約を結んできたロジャー・フェデラー選手(テニス)が、ユニクロとグローバルブランドアンバサダー契約を締結。契約金は約330億円と報じられている。フェデラー選手とはキャリア後期で契約を結んだこととなるが、錦織圭選手(世界ランキングは現在9位)とは2011年からスポンサー契約を結んでいる。
同ブランドは他にも、国枝慎吾選手とゴードン・リード選手(どちらも車いすテニスプレーヤー)、アダム・スコット選手(ゴルフ)、平野歩夢選手(スノーボード)のスポンサーでもある。2016年には女性初のグローバルブランドアンバサダーに、日本人最年少でエベレスト登頂に成功した南谷真鈴氏が就任。南谷氏は昨年、ユニクロの高機能ウェアを着用し、北極点を踏破している。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:田崎亮子)