ソーシャル経済メディア「ニューズピックス(NewsPicks)」を運営するユーザベースが、米アトランティックメディアの経済ニュースメディア「クオーツ(Quartz)」を買収する。
買収の対価は7500万ドル(約82.5億円)にアーンアウト対価を加え、最終的には7500万~1.1億ドルになる見込み。取得完了は7月31日を予定している。クオーツはユーザベース傘下に入り、共同プレジデントであるジェイ・ローフ氏ならびにケビン・ディレイニー氏は共同CEOに就任する。
東京に拠点を置くユーザベースは2008年に創業。ニューヨーク、香港、シンガポール、上海、スリランカにもオフィスを構えており、グローバル展開、特に米国と欧州において事業拡大を目指している。同社にとって、クオーツは初めての企業買収となる。
ユーザベースが発表した声明によると、グローバルな読者層や取材ネットワーク、広告事業、モバイルファーストなデザインなどといったクオーツの強みと、データや課金モデルにおいて経験豊富なユーザベースを組み合わせることで、より堅牢なビジネスニュースブランドをグローバルに拡大できる見込みだという。
クオーツは2012年に創業し、2016年には売上約3000万ドルのうち、利益は約100万ドルであった。今年の売上は25~35%増を見込んでいる。売上のほとんどは広告によるものだが、課金モデルの開始を視野に入れていた。その背景には、フェイスブックとグーグルによるデジタル広告の複占状態が続いていることが挙げられる。課金モデルに移行するメディアは今後も増えるとみられ、先月にはブルームバーグが課金制を導入した。
梅田優祐氏(ユーザベース共同創業者兼CEO)は、ニューズピックスの構想を考え始めた頃にクオーツを知り、コンセプトやデザインにインスパイアされたという。スマートニュースやLINE NEWSなどがしのぎを削るニュースアプリの中で、ニューズピックスは若いビジネス層から支持されており、330万人のユーザーのうち64,000人が有料会員だ。
日本のメディアによる海外メディア買収は、2015年の日本経済新聞社による英フィナンシャル・タイムズ買収に続くものとなる。
(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:田崎亮子)