Campaign Staff
2019年2月22日

世界マーケティング短信:アップル、日本の若きクリエイターをターゲットに

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:アップル、日本の若きクリエイターをターゲットに

アップルの新キャンペーンは学生がターゲット

「学生をもっとクリエイティブに」 −− アップルが学生を対象としたショートフィルムのシリーズを公開した。手がけたのは、昨夏公開されたキャンペーン「Behind the Mac」にも参画したTBWA。登場するのは「音楽作りをより身近なものに」と提唱する学生アーティストのMom(マム)をはじめ、ホテルプロデューサーの龍崎翔子氏、ロボットスペシャリストの東出風馬氏、子どもたちに自然の楽しさをもっと経験させたいと活動するツリーハウスデザイナーの稲垣信吾氏といった気鋭の若者たち。

各人がフィーチュアされた4本のショートフィルムはオンライン用だが、1本はテレビCF用に製作され、全員が登場する。









iPhoneの売上げがピークを過ぎたと専門家が指摘するなか、アップルはハードウェア企業としてだけではなく、サービスプロバイダーとしての成長も目指しているという。中でも注目すべきは、全てのデバイスにおけるアプリケーションのクリエイションプロセスを簡素化しようとしていることだ。

意欲的なクリエイティブプロフェッショナルに狙いを定めることは、アップルにとって極めて理にかなっている。フィルム自体は決して独創的なものではないかもしれないが、それぞれの登場人物は好感が持て、視聴者にとっても身近に感じられるだろう。世界最大級のブランドがストーリーのローカリゼーションに価値を見出していることも明るい材料だ。

TBWAのアジアトップ、2年も経たぬうちに辞任

TBWAアジアのプレジデントを務めていたイアン・ペアマン氏が、シンガポールの消費者サービス関連スタートアップに参画するため20カ月で辞職した。同氏はTBWAに加わるため、ロンドンのAMVBBDOからシンガポールに移転。広告業界では23年のキャリアを誇る。TBWAは同氏辞職の背景や次期プレジデント候補に関し一切コメントを出していない。ペアマン氏も「起業家的な取り組みを行うタイミング」とだけコメントし、詳細は語っていない。

ファストカンパニー、革新的な広告会社を10社選出

米ファストカンパニー誌が毎年選出する「世界で最も革新的な企業」が、今年も発表された。広告部門で選出されたのはワイデン+ケネディ(W+K)、ジャイアントスプーン(Giant Spoon)、BBDO、ギムレットメディア(Gimlet Media)、アクセンチュア・インタラクティブ、ミーンズメディア(Means Media)、Droga5、イナモト・アンド・カンパニー、TBWAワールドワイド、John x Hannesの10社。

W+Kは文化の「2歩先を行く」こと、アクセンチュアは「戦略的コンサルティング、アドテク、クリエイティブワークの融合を導いた」こと、イナモト・アンド・カンパニーは「ユニクロをAIの時代に適応させた」こと、そしてTBWAは「アップル社のブランドを新鮮な方法で磨いた」ことが評価された。

広告に限らない全業種の企業の中で、最も革新的だと評価されたのは、サービスの予約や配達を容易にする中国のテックプラットフォーム「美団点評(メイチュアン・ディアンピン)」。ツイッチ(Twitch)は10位、ショッピファイ(Shopify)は12位で、アップルは17位であった。

燃え尽きるリスクを抱える、プログラマティック広告のトレーダー

プログラマティック広告のトレーダーは、楽な仕事ではない。シンガポールに拠点を置くプログラマティック広告会社、CtrlShiftが実施した調査によると、6つ以上の案件を掛け持ちで管理していると回答したのは全体の3分の2に上った。「管理」というのは通常、膨大な量のレポート作成や手作業などの「煩雑な」作業を意味しており、インサイト(洞察)を生み出したり、何かとても有用なことをするといった類のものではない。

実際のところ、レポート作成は最も時間を要する作業だ。レポート作成作業の半分以上が手作業だと回答したのは42%、そして手作業でのレポート作成に費やす時間が8割に及ぶと回答したのは29%であった。労力がかかるのは、小規模なキャンペーン(5万ドル以下)でも同じこと。約半数が、現在の職務に就いて12カ月以内であり、リードトレーダーの39%が業務のストレスが原因で、治療のために医療機関を受診していたことが明らかになった。

「この業界で最も悲劇的な機会損失は、プログラマティックトレーダーの活用がうまくできていないこと」と語るのは、CtrlShift社のドミニク・パワーズCEO。「これほど多くの時間を、平凡で煩雑な作業や、何の関連性もない複数の案件を掛け持ちすることに費やしていては、真のナレッジワーカーとして活用できているとは言い難い状況です」

S4キャピタル、インドに進出

マーティン・ソレル卿が昨年立ち上げたS4キャピタルが今後数日間で、バンガロールとムンバイに事業所を新設する。S4キャピタル傘下となったクリエイティブプロダクション「メディアモンクス(MediaMonks)」も、インド市場へと参入する。ソレル氏は、「より速く、より良く、より安価なデジタルコンテンツを」提供することで、インド市場での成功に自信があると語る。インドではデジタルコンテンツ業は比較的まだ発展途上で、主流の広告よりも注目されていない。(マス媒体以外を使った)販促活動など注目されにくい領域にフォーカスし、かつてWPPで名を得たようにインドでも成功をかち得たいと、同氏は意気込みを語った。

デジタル、米国でついに従来型メディアを追い抜く

こんな話は以前にも聞いたことがあった気がするだろう。だがそれは今まで幾度となく、そのような予測が出されてきたためだ。イーマーケター(eMarketer)が今週発表した見通しによると、米国の広告主が今年デジタル広告に費やすのは1320億ドル以上、一方で紙媒体やテレビなど「トラディショナルな」メディアの広告費は1,090億ドル。総広告費の37%はグーグルが占め、フェイスブックは22%、アマゾンは8%となるという。(イーマーケターは今週、この見通しを修正した。アマゾンの広告収入は2020年までに150億ドルになると予測。これは米国のデジタル広告市場の1割を占める規模だ)

デジタルマーケティングに転機が訪れていることを示すものだが、それ以上の意味は無いだろう。従来メディアは依然として非常に重要だ。マーケターは他媒体への広告費をすべてデジタルにまわそうと考えるのではなく全体を見通して、あらゆるチャネルを考慮しながら、施策の有効性を判断するべきだ。またデジタル広告を、消費者の視点から改善していく方法も見つけるべき。酷い広告は、依然として多い。

ゴーン氏長期拘留は「日本ブランド」へのダメージ?

日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告の新たな弁護人となった弘中惇一郎弁護士は今週、検察や司法機関の姿勢が「日本はうっかり行くと何をされるか分からない国」という印象を与え、「ビジネス面で世界に衝撃を与えた」と語った。ゴーン被告の保釈請求は二度にわたって却下されているが、ある観測筋はこうした措置が「必要以上に過酷」と話す。弘中弁護士は更に、「日本は人権に関して予測不能で、行き過ぎた姿勢をとる国と思われかねない」とも警告。ゴーン被告の裁判が半年以内に開かれる見通しはなく、この一件はしばらく国際的関心を呼びそうだ。たとえゴーン被告に最終的に有罪判決が出たとしても、日本ブランドと日産双方の評判に傷がつくことは避けられまい。この汚点を完全に拭い去るのは、当初の予想よりもずっと難しいだろう。

(文:デイビッド・ブレッケン 翻訳・編集:水野龍哉、田崎亮子)

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