Ryoko Tasaki
2023年6月16日

世界マーケティング短信:カンヌで考える環境負荷と広告

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

世界マーケティング短信:カンヌで考える環境負荷と広告

※記事内のリンクは、英語サイトも含みます。

カンヌライオンズでグリーンウォッシュを注視

19日から開催されるカンヌライオンズ国際クリエイティビティ・フェスティバルを目前に、キャンペーングループ「クリーン・クリエイティブス(Clean Creatives)」が今年も若手クリエイターと参加し、活動を行うことを明らかにした。目的は「注目を集め、議論を活性化させ、行動を促す。このことで会期中に広告のプロフェッショナル達に対し、オンラインと対面の両方で、化石燃料企業の問題を避けられないものにすること」にあるという。

同団体はNPO「クリエイティブス・フォー・クライメート(Creatives for Climate)」などと共にイベントを開催する他、参加者がグリーンウォッシングの事例を識別できるよう、複雑化するグリーンウォッシングを分類したツール「グリーンウォッシュ・スウォッチ」を会場で配布する。このツールを制作したクリエイティブス・フォー・クライメートの設立者であるルーシー・フォン・スターマー氏は「カンヌでの私たちの使命は、業界で最もクリエイティブな人々に挑み、自分たちの創造性を何のために使っているのかと問いかけること」と語る。

クリーン・クリエイティブスのエグゼクティブディレクター、ダンカン・マイゼル氏も「気候危機はあまりにも急速に起こっており、自分たちのカーボンフットプリント(CO2総排出量)だけに焦点を当てるわけにはいきません。さまざまなアプローチをつなぎ、急速な変化を起こすチャンスをとらえる必要があります」と語り、サステナビリティーの実践者やエージェンシー、企業などがイベントで一堂に会することで「この問題のリーダーとなるための、包括的な戦略を構築するチャンスを提供できれば」と意気込む。

カンヌライオンズの会期中には他にも、アド・ネットゼロが特別エリアを用意し、アクションプランの実施に関する質問に答えたり、ワークショップを開催する予定だ。

エデルマン、BtoB向けのユニットを立ち上げる

エデルマンはBtoB企業向けのマーケティングに特化したユニット「エデルマン・ビジネス・マーケティング(Edelman Business Marketing)」をグローバルで立ち上げる。オーディエンス調査、ソートリーダーシップ戦略、コンテンツマーケティングなどのサービスを含む、統合マーケティングのプログラムを作成する。ユニット全体を率いるのはジョー・キングスベリー氏とデイビッド・ホワイティング氏。

エデルマンのビジネスマーケティング事業は過去3年間で2桁成長を遂げ、年間4000万米ドル以上の収益を生み出している。主要なクライアントにはマイクロソフト、HSBC、シェル、三菱重工などがある。PRウィーク誌の調査によると、エデルマン全体の2022年の収益は約11億米ドル(前年比12.8%増)だった。

トニー・ザ・タイガー、マルバニー氏との写真に一部から反発の声

トランスジェンダー女性のインフルエンサーであるディラン・マルバニー氏をめぐり、再び騒動になっている。トニー賞の授賞式でマルバニー氏が写真撮影に応じていたところに、ケロッグのシリアル「コーンフロスティ」のキャラクターであるトニー・ザ・タイガーが登場。両者がカメラに向かって一緒にポーズをとった写真がソーシャルメディアで拡散し、保守派からの反発を買うこととなった。

 コーンフロスティは、トニー賞の公式パートナー。ケロッグのシニアバイスプレジデントであるクリス・バーナー氏によると、トニー・ザ・タイガーは個々の候補者やゲストとの出演契約のためではなく、あくまでも公式パートナーとして参加し、さまざまな候補者やゲストと写真撮影に応じていたという。

マルバニー氏は4月、バドライトとのコラボレーションをインスタグラムで発表したところ、保守派が猛反発。正式な広告キャンペーンではないことを同ブランドは強調したが、不買運動にまで発展し、米国での売上が急落した。

(文:田崎亮子)

提供:
Campaign Japan

関連する記事

併せて読みたい

4 日前

世界マーケティング短信:ジャガーのブランド刷新、波紋を呼ぶ

今週も世界のマーケティング界から、注目のニュースをお届けする。

2024年11月28日

エージェンシー・オブ・ザ・イヤー2024 日本/韓国:結果発表

Campaign Asia-Pacific主催「エージェンシー・オブ・ザ・イヤー2024 日本/韓国」の、受賞者/受賞企業が発表された。

2024年11月28日

若手クリエイターへのメッセージ 「歩みはゆっくりでも大丈夫」

若手クリエイターの悲痛な告白に対し、エージェンシーのCEOが共感と、実用的で実行可能なアドバイスを寄せた。

2024年11月27日

エージェンシーモデルを再考し、効率化を

現在の広告業界に対する不満は依然くすぶっている。人材とクリエイティビティー、そしてそれらの成長を妨げるシステムを再考して変革を実現すべし、と識者は唱える。